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《2003.6月−10》

意図的に白けてる・・こともなさそう
【渚のバーバリアン (バカダミアン(レディース))】

作・演出:重松輝紀
13日(金) 20:05〜21:25 ぽんプラザホール 1000円


 毎度のことだが、バカダミアンはなかなか感想が書きづらい。おもしろかったのかどうか、印象がうまく自分のなかに定着しない。時々は笑ったけれど、グッと引き込まれることはない。
 盛り上げたいようには見える。盛り上げたいのにスキルと熱がなくておもしろくできないのならば、単純に文句を並べれば感想は済むが、そうばかりではなさそうなのが厄介なのだ。
 常に醒めていて、意図的に白けているという感じもある。それじゃダメだよ、というのと、それ突き詰めたらおもろいじゃん、という相反する反応が自分のなかに並存する。
 このような感想になるのは、今回の公演が人物も4人で、ドラマが見えやすくなっていることと関係するような気がする。バカダミアンが変わってきたということか。でも、そのような相反する反応を自分自身もてあましてしまうということもある。

 太平洋戦争中、南洋の島で、山下将軍をめぐる対応から、田西と岡津の戦いが始まり、その戦いは今の子孫まで続いている。
 互いに敵対しながら、ふざけあい、助け合い、睦みあう。そして岡津の敗北と死。だが岡津は生き返り、・・・、決着しない、という結末。

 出演者4人で構成も表現も多彩になった。
 複雑な構成がとられることから、ストーリーが見えやすくなった。ふたりが突然女性に変わってしまう趣向が楽しめた。
 出演者は4人とも濃いキャラクタで、外面的なパワーはある。そのパワーがうわすべりする。ただ、うわすべりの度合いはいままでの公演よりはるかに少ない。それを考えると、意図的にうわすべりをねらっているとは思えない。
 であれば、問題はドラマ性を拒否するセリフで、それを工夫することでおもしろみは全然違ってくるのではないかと思う。
 だた、ドラマ性を徹底的に拒否し続けながらパワーを込めるという方向もあるのかもしれない、と思うところもあるからむずかしい。

 セリフは引用ばかりで、感情移入させない軽妙なタッチでどんどん進んでいく。
 それはそれでいい。問題は引用のしかたと対象があまりに軽すぎるのだ。味噌も糞もいっしょにしていて、大事なところが逃げていく。ストーリーに絡めた引用の質が上がればパワーが出てくる。それは、ドラマ性にこだわるこだわらないにかかわらず必要なことのような気がする。

 この作品のパワーからすれば、空席が目立つぽんプラザホールよりは、熱気のこもるシアターポケットの方がインパクトがあったのではないだろうか。せっかく全裸シーンもあったことだし。
 この公演はあすまで3ステージが上演される。


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