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《2003.6月−18》

菊之助の女形がいい
【南総里見八犬伝/仮名手本忠臣蔵/紅葉狩 〜六月博多座大歌舞伎 昼の部〜 (博多座・松竹)】

構成:博多座・松竹
22日(日) 11:00〜15:05 博多座 3150円


 今月の博多座大歌舞伎の昼の部では、「南総里見八犬伝」がケレン味たっぷりで楽しんだ。「仮名手本忠臣蔵」、「紅葉狩」は、ちょっと冗長なところが気になった。

 「南総里見八犬伝」(曲亭馬琴・原作、渥美清太郎・脚色)は、「芳流閣の場」と「利根川の場」の二場。上演時間は約25分。
 大掛かりな装置を使って、華やかで楽しい舞台だ。「芳流閣の場」では、美しい大屋根の上でのアクロバッティングな立ち回りがいい。次への場面変換では、大屋根はセリ上がり、そのまま後方に倒れると、倒れた装置の床が次の場面の壁になる。
 「利根川の場」では八犬士が勢ぞろい。犬士それぞれの個性的な衣装ながら、同士愛を感じさせる統一された動きで、ダイナミックな舞台だった。

 「仮名手本忠臣蔵」は、「祇園一力茶屋の場」。約1時間50分。
 2時間近いこの場の、前半は由良之助(吉右衛門)の遊興、後半は寺岡平右衛門(松緑)とおかる(菊之助)の兄妹愛が中心になる。
 テンポがややゆったりとしすぎるかなと思えるのは、役者のからみの迫力が出ていないことによる。かろうじて、終盤近くの平右衛門とおかるの会話でやっとそれらしい情が見えるが、全体としてはさっぱりしすぎだ。
 菊之助の女形が研ぎ澄まされた美しさで見せる。

 「紅葉狩」(河竹黙阿弥・作)は、歌舞伎十八番のひとつ。約1時間5分。
 真っ赤な紅葉と多人数の演奏者で舞台いっぱいという華やかな舞台に目を奪われる。常磐津、義太夫、長唄の連中があわせて20人近く舞台にいるというのは壮観だ。
 ただ、舞踊劇のためかグイグイ引っぱられるという感じは薄く、茂継(團十郎)と鬼女(菊五郎)のラスト10分の立ち回りのために全体があるという印象さえ持った。瞬発力が勝負かなという気がしたが、平板なところをどう見せるか、工夫の余地はある。
 團十郎の決めポーズはかっこよく決まっている。菊五郎の女形もいい。

 博多座に行ったときの食事場所は劇場横のドトール・コーヒー。そこでパンを食べていたら、片岡芦燕さんが入ってきた。舞台以外で初めて歌舞伎役者を見た。


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