劇団えのき岳第08遊撃小隊 の舞台はだんだんレベルダウンして、質の低下が著しい。前回の新人公演にはうんざりしたが、今回の番外公演もひどい。
作る側だけしか楽しめない舞台で、観客を楽しませるには程遠い。客席に座ってこの苦痛を味わってみろよ!といいたくなる作品を、料金を取って見せることがまちがいだ。
「Solitude of the moon」(作・演出:土井飛鳥)は、特別捜査官となった改造人間(絶対無敵人間)が、自分の改良型の改造人間のいる麻薬組織と闘う話。上演時間は約45分。
のっけからポンポンポンポンとピストル発射のオンパレード。ゲームよりももっとお手軽で、こんな表現しかできない人間に「いのち」とか「思い」とか言えるはずもない。改造人間どうし、あるいは人間との関係も中途半端だ。主宰の榎本史郎はすでに、脳を摘出した人間が自ら動き出すというインパクトのある作品を書いている。それから比べると、これは何という退歩だろう。
時間稼ぎのつまらないセリフやひどいダンスにもうんざりした。このダンスに比べると素人の宴会芸のほうが圧倒的におもしろい。何考えてんだろう。
「出来過ぎた話」(作・演出:榎本史郎)は、恋人どうしのふたり芝居で約35分の上演時間。
大学生・直樹のところに同じ大学の雪乃が訪ねてきての日常が描写される。そして唐突な別れ―なのに直樹は「雪乃が自分のなかに生きているからいつでも会える ⇒ 出来過ぎた話」だと。
冗談やめてよ。そんなくだらない一言のためにガマンして見ていたオイラはどうなるんだよ。第一、こいつら恋人どうしじゃねぇぜ。相手を思うことばやそぶりはほとんどなく、話すことは超冷静に世間話だけ。手も握らずキスもせず、そんなのが何で「自分のなかに生きる」んだ? よく言うぜ。
そんなんだから、雪乃が去っていっても衝撃はまったくないけど、そんな女を思い出して何になるちゅうの。それくらいの恋愛しかしていないのかと、ほんとバカバカしくなってくるぜ。
こんな二本立てはいただけない。発想が貧困すぎるし、作りもあまりにお手軽で、日頃ろくに演劇のことなど考えていないのが見えてしまう。
この公演はきのうときょう5ステージで、私の観た回は25人くらいの観客だった。