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《2003.7月−4》

ほんとうに詰め込み過ぎなのだろうか
【2003年「踊りに行くぜ!! vol4」出演者選考会+ダンスディスカッション (JCDN)】

構成:JCDN
13日(日) 14:35〜16:10 イムズホール 無料


 2003年「踊りに行くぜ!! vol4」出演者選考会+ダンスディスカッション を観にいった。全部で7チームのオーディション出場チームのうち、はじめの2チームを観せてもらった。
 審査員が意見を言われたあとそれと同じ重さで観客との意見交換もあり、さまざまな意見が飛び交って互いにダンスへの認識を深めあうという主旨がきちんと実行されていた。

 1つ目の作品は、ダンスチーム「光」の「心とカタチ」(作・振付:中山将宙・照屋はるみ(共作))。男女ふたりによる上演時間23分の作品。
 恋愛物語がビョークの曲にあわせて構成される。信じているものをわかってくれない状況がしつこく繰り返されるが、最後は理解されて明るく終わる。
 ストーリー性の高いダンスで、その表現の即物性がおもしろいが、その不徹底のために却ってネックになってしまった。音のボリュームがありすぎることもあるが、これでもかとばかり夾雑物が多すぎて重い。アイディアも、例えば、冒頭に出てくる男の上司の人型のアイディアや男によるバイオリンのような、ダンスに付随するもので徹底的に押しまくるという手もあった。でなければ、シンプルなまでに余分をそぎ落とすか。いまのままでは中途半端な印象をまぬがれない。どっちかに徹底してほしかった。

 2つ目の作品は、Selbstの「カララウ」(作・振付:スウェイン佳子)。女性3人による上演時間20分の作品。
 コンセプトは「不条理ななかで生きていくこと」だそうだが、かなりかけ離れた印象を持った。
 はじめのシーンではスリップ姿で登場、五体投地や逆立ちなどの静かなフォーメーションで3人の関係を示す。そのあと、突然ハイテンポな曲の大振りなダンスに変わり、3人の間でバトルが展開する。そしてふたりのダンサーは彫像になってしまう。ここまで見る限り、下手な芝居よりよほど鮮明なストーリーを感じる。
 そして最後のシーン、ひとりが赤い服に、他のふたりが銀灰色の服に着替えて、舞台全体を走り回るような躍動的な舞台で終わる。魅力的ではあるが、取ってつけたようで全体の統一感を完全に阻害していて、混乱してしまった。後半まったくためない表現で、出しっぱなしになっていて、雑駁になってしまった。

 審査員の評をおもしろく聞いた。自分の漠然とした感想をみごと言語化してくれるのが心地よかった。
 審査員が理想としているダンスが、シンプルなまでに練り上げられたコンテンポラリーダンスだというのは、その意見からわかった。だから、「削ぎ落とす作業をしなければならないのに加えることしかしない。」という意見が出るのはよくわかるし、確かにそうだろう。
 しかし考えてみると、削ぎ落とす前にまず、テーマにフォーカスした思いが十分に詰め込まれているか、表現方法にアイディアが詰め込まれているか、が問題ではないだろうか。必要なところが充実していることがまず必要で、そのうえでどうでもいいところに詰め込まれたものを削ぎ落とし、さらに表現上の工夫を思い切り詰め込んで、その上で最後が表現上の削ぎ落としではないか。思いや表現方法の絶対的な質と量はまともな作品の要件のはずだ。問題があるとすればまず、それが十分でないことだ。

 このイベントはNPO法人・JCDN(Japan Contemporary Dance Nettwork)の主催で、全国11ヶ所での「踊りに行くぜ!! vol4」公演の出演者のオーディションで、審査員は6名の方。
 このイベントは、私も参加している「制作者セミナー」の、現場編の実習対象で、若いスタッフで運営されている。観客は70人前後だろうか。
 出場の全チームを観たかったけれど、予定があって2つだけだったのが残念だった。それでも十分おもしろかった。


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