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《2003.7月−13》

ふたつともちょっと重めかな
【ひとり芝居 皿山炎上/怪談噺 市川堤 (博多に”演劇街”を出現させる会)】

構成:博多に”演劇街”を出現させる会
26日(土) 18:30〜20:30 博多百年蔵 1500円


 「博多に”演劇街”を出現させる会」の第3回プロデュース公演は、石蔵酒造の博多百年蔵での「ちょっと風変わりな大人ための夕涼み会」で、ひとり芝居と怪談噺。こんなイベントは楽しい。ただ作品については若干の不満は残る。

 ひとり芝居「皿山炎上」は、作:石山浩一郎、演じるのは芝居屋企画の木本トモ子。上演時間は40分。
 長崎県の民話を元にした作品で、陶工加藤民吉 と2代目福本仁左衛門の娘 いと との悲恋物語。民吉は実は尾張藩の産業スパイで、妻子持ちだった。
 完全な一人称のひとり芝居ではなくて、ときに数人の人を演じる。それはもともと普通の芝居だったのをひとり芝居に作り変えたなごりだろうが、うまくこなれていない。そのためか、ストーリーもちょっとわかりにくいところがある。
 印象はかなりどぎつく、しかも一本調子だ。クライマックスに向かって盛り上げようと熱が入りすぎていて、すっきりしたところがない。もっと静と動をくっきりさせたほうがいい。

 「市川堤」は、上方落語の怪談噺で、内浜落語会会長の粗忽家勘朝の高座。一門の方が幽霊として客席をそろりそろり。約45分。
 越後屋の若旦那・次郎吉は遊び人で親から勘当され、夫婦となった妻を殺したり、強盗殺人をして仲間からゆすられると殺してしまう。おこんという女と夫婦になるが、顔に腫れ物ができたおこんと行き違いで離れ離れになる。そのあと大店に勤めそこの主人の二号と結婚するが、誤解から主人を殺す。その後はじめた商売は繁盛し、次郎吉は成功する。
 その商売の帰りに姫路の市川堤に差しかかると、こじき女となっているおこんと再会するが、やさしい言葉とは裏腹におこんを川に突き落とし切りつけて殺してしまう。そのあとの夜の宿で、おこんの幽霊が現われる。

 落語の怪談噺は笑いも少なく、どっちかというと講談に近い。ストーリーも入り組んでいる。この 市川堤 もずいぶん長い作品のようだが、結果的にはおこんの幽霊がその日のうちに夢の中に出るというところに集約されたのでは、それまでの長い話は何だったんだろうという気がした。いっぱい死んだのに、死んだ人間の怨念が連繋しないのだ。原作はどうなっているんだろう。
 そういう構成上の不満はあったが、勘朝はその長い話を飽きずに聞かせる。この人のいつもの軽い感じとはまたちょっと違った語り口もいい。そういうところは楽しめた。それに客席を歩く幽霊も楽しかった。

 この公演は2日間2ステージ。博多百年蔵は超満員だった。


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