「鳳凰伝」は、しっかりとした構成、じっくりとした表現がいい。「ザ・ショー・ストッパー」は、切れのいいダンスがいい。宝塚歌劇の楽しさを、たっぷりと味わった。
グランド・ロマン「鳳凰伝−カラフとトゥーランドット−」は、オペラ「トゥーランドット」を原作とする、中国を舞台にした寓話劇。約1時間50分。
戦に破れ、滅びてしまった国の王子カラフ(和央ようか)は、生き別れになった父を探し求めて北京に来る。そこでは中国皇帝の一人娘トゥーランドット(花總まり)が、求婚してくる異国の王子たちに3つの謎を出し、それが解けない者を容赦なく処刑していた。
トゥーランドットの虜になったカラフは、謎解きに挑戦して見事にすべてを解き明かす。 そこまでもなかなかおもしろいが、そのあとのいちばんの山場であるトゥーランドットがカラフを受け容れるまでのやりとりで、冷酷なトゥーランドットが変容していくところをじっくり描いていて楽しめた。
歌とダンスは宝塚歌劇ではどういうふうに使われているのだろう。この舞台では、場面の状況説明とドラマの補完のために使われていた。
場面が変わったとき、多人数の歌とダンスで状況説明がされる。レビューの名残りかと思わせる手法だが、セリフだけよりもはるかに説得力があり、その世界にすーっと連れて行ってくれるのは確かだ。
もうひとつのドラマの補完だが、この舞台でいえば、トゥーランドットを見たカラフの恋心はストレートプレイ部分でわかるが、歌でその気持ちを徹底的にわからせようとする。歌にドラマを孕まないのはやや不満だが、単なる心情吐露ばかりではなく、つぎの展開を生むために深まり定着するために使われる。
ドラマの表現では「夢」をうまく使う。凱旋するカラフ ― しかしそれはカラフの夢のなかでのことで、流浪の身となった現実の厳しさを強調する。トゥーランドットが夢のなかでカラフへのほんとうの気持ちを発見するという使い方もされる。
グランド・ショー「ザ・ショー・ストッパー」は、ダイナミックなダンスに溢れたレビューで、14景、約45分。
ショー・ストッパーとは、拍手が鳴り止まず、ショーがストップしてしまうほどのパフォーマンスを見せる人たちを表す言葉。このショーはストーリー仕立てで、若者と女性の世界を飛びまわる恋を描く。
そのダンスが実にすっきりしていて、コンテンポラリーダンスに近い。衣装も白と黒に一部赤と強烈だがけばけばしさはなくて、みごとなフォーメーションのダンスを際立たせる。
和央ようか は男っぽい顔立ちに男っぽい声。花總まり は愛くるしいほどの女らしさがいい。盗賊の頭バラクを演じる 大和悠河 のピリッと締まった演技もいい。
この宝塚宙組公演は1日から23日まで。満席で、立ち見で観た。