榎本史郎は、何もかも新人レベルまでレベルダウンしてしまった。
かっての榎本作品からみて、このざまは何だ! と毒づきたくなるひどい作品だ。そんな作品を堂々と舞台にかける姿勢もおかしい。池田美樹の原作を完全に殺しもしてしまった。
ぐうたらな王子の恋の話。
王が死んで、何とか王子がやる気になるようにと隣の国の姫との縁組を画策する重臣たち。その姫が乗り込んでくるがいっこうに興味を示さず、少女との淡い恋も重臣のさしがねによる少女の死で終わり、やっと姫に気がついたときには姫は去っていく。
寓話なら寓話らしい進め方があるだろうが、この舞台、夾雑物ばかりで寓話劇にもなっていないし、かといって普通の芝居でもショーでもないという、まったく中途半端な作品だ。その夾雑物について見ていく。
脚色における夾雑物。有効なエピソードでなく要らんコツばかりで、もともとドラマ性の弱い原作をさらに弱くしてしまった。ちがうだろ、必要なのはもっとちゃんとメリハリをつけることだろ。
演出における夾雑物。これは各シーンの"汚なさ"がその雑さを端的に示している。その極端な例は、大部分の出演者が一度に舞台に出ているシーンでのまったく勝手な動きの醜さ。何も考えていないのがわかる。他のシーンも押して知るべしだ。
演技における夾雑物。そのシーンの意味も考えず、だからちゃんとしたしゃべりもできず、只々がなるだけ。そんな学芸会以下の演技が多すぎる。どんな演技をしているかを想像する力もないようだ。
そのような発想の貧困は、興味のレベルの低さの象徴だ。くだらないものにしか反応しない感性の持ち合わせしかないのがわかる。このままなら、この劇団の舞台はもう見る気がしない。
この舞台は、くうきプロジェクト・ワンコインシアターの第4弾で、きょう3ステージ。私の観た最終ステージは満席だった。