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《2003.8月−14》

前回公演よりはずいぶんよくなったけれど
【アムステルダム・リバー (ロックンロール・ツアー)】

脚本・演出:大竹謙作
31日(日) 14:00〜15:30 ぽんプラザホール 1200円


 前回公演に比べるとずいぶんよくはなった。
 荒削りながら作品の骨格ができていた。しかし、まだまだ課題のほうが多い。

 ザクロ(女の子)とヨモツ(男の子)の自分探しに、太陽神を独占しようとするウロコ一味との戦いがからんで話は進む。
 ザクロとヨモツを異端として亡きものにしようとする、ウロコの命を受けた殺し屋である女豚・ザクロと男豚・ヨモツ。刃物を武器に戦いが続く。

 脚本の構成がよくなっているのは、ザクロとヨモツにしか見えないが、天使ともいうべき神の使いであるウツヨ、トコヨを配したこと。狂言回し以上の意味を持たせて、作品に奥行きを出した。
 人物の配置がシンメトリックでやや機械的なところが気にはなるが、それぞれの人物に役割を持たせられたのはいい。そのように脚本がよくなっているのもあって、俳優もこれまでよりは生き生きしている。
 気になること。どうなんだろうか、すぐに始める刃物を武器を使った戦いは、ピストルよりはいいとしても、それでも死を意識する肉体感覚からはかけ離れている。このゲーム感覚のために薄くなってしまった死の感覚。それが欠如していていいのだろうか。

 独占しようとする者にとっての異端が、実は正統な嫡子であり、太陽神は解放されて世界は救われることになるのだが、そこに何もかも集約されてしまうことには不満が残る。結局みんな、中途半端にいい人であり中途半端に悪い人だからだが、太陽神の解放からスパンコールにスケジュール的に結びつけてしまい、せっかく広げた展開を蛇尾に終わらせてしまった。
 そして極めつけ。スライドで、「別にどうだっていいんだ、ただすがるものがあれば」というのはあんまりだ。せっかくそこまで観てきたのにバカにされたという印象しか残らない。そんなことを言いたかったんだっけ? そうではあるまい。

 ほぼ一年ぶりとなるこの劇団の公演は今回4ステージ。半分くらいの入りだった。


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