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《2003.8月−15》

ラフな演出・ラフな演技の功罪
【Show of The Show Time (バキューンカンパニー)】

作:モンゴル狸 演出:富田賢一
31日(日) 17:05〜18:35 甘棠館Show劇場 800円


 田坂哲郎などが抜けたあとのバキューンカンパニーはどういう作品を作ってくるかと思っていた。できた作品は、それほど重くないストーリーに人間模様をからませた人情ものともいえる作品だった。
 構成がそれほど強くなく、アドリブが多いラフな作りに見えた。それがおもしろみでもあるが、不満もまたそこにある。

 ストリップ劇場の地下にある居酒屋が舞台。
 売れない漫才コンビの近藤と荒川。ストリッパーのジュリエットとリリパット、居酒屋の女マスター、それにラジオのパーソナリティ・ポポーニャ斉藤がからむ。
 始まってからズ〜っといかにもけだるいというなれ合った楽しさが描かれる。それが1時間が過ぎて、全体の展開に大きくからむ近藤の弟が登場。ストリップ劇場の閉鎖が告げられ、みんな離ればなれになっていく。

 ストーリーはあってもドラマとしては弱く、軽いコントの連続のようなシーンが延々と続く。が、それはそのような生活を必ずしも積極的には肯定しない。
 そのようなシーンはラフで、演出が弱く、演技はアドリブだらけと見える。もともと大元のアイディアが大したことがないところにアドリブだから、立てつけの悪い建物のようにギシギシときしみ、ゆらぎ、あるいは吹っ飛びそうにさえなる。
 例えば、「鋤だ!」を「好きだ!」と聞きまちがえるのは作為が低級すぎて白ける。アドリブはそんな不安定さをさらに不安定にして、グイグイ引っぱられることはない。まさかそのような不安定さ・弱さをねらっているわけではあるまい。

 人物のいい加減さも気になる。
 何にも賭けない人々、何も楽しまない人々。人物に意欲がないから、その人たちの未来に関心が持てないが、それでもストリッパーがモナコの国王と結婚するなどというのは荒唐無稽が過ぎる。浮き足立った展開で、白ける。

 この舞台はきのうときょうで4ステージ。最終ステージを観た。
 観客はほとんどが若い人で、満席だった。


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