発想はそれなりにおもしろいのに、表現方法でそれをみごとに殺してしまっているという舞台だ。
同じ男を殺したという3人の女。それに係わる祖父江という男。
催眠術などによる記憶操作や、パラレルワールドを見る幻覚や、それの治療を通した、謎解きの物語だ。
アイディアはいいから、ちゃんと書けていればもっとおもしろいだろうに。
脚本は、小出しにしすぎで引き伸ばすばかりだ。だから、いかにもトロい展開に白けるばかりだ。
観客に注意力は要求するのに、演っているほうは意味のないくだらんサブルーチンばかりに入りこむ。例えば、「サンスクミ」→「サルスクイ」→「サルなんか助けて!」といった、メインストーリーに関係のない、ことば遊びにもなっていないよけいなものにうんざりだ。
演出も思わせぶりが過ぎる。におわせるだけで、あとは観客が勝手に感じてくれ〜というような演出は、勝手な逃げだ。そんな表現をカッコいいとでも思っていたら、思い違いもはなはだしい。ストーリーをきちんとわかるようにし、演出でメリハリをつけて、観客に伝えるべきことはちゃんと伝える必要がある。
演技もやはり、きちんと演じないのをカッコいいと勘違いしている。何かを伝える気があるのだろうか。
この舞台はきょう2ステージ。私の観た2回目は、15人ほどの観客だった。