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《2003.9月−8》

怒幻鳥栖ッ都 のおもしろさに驚く
【佐賀新聞演劇祭in鳥栖 (佐賀新聞社)】

構成:佐賀新聞演劇祭実行委員会
21日(日) 13:00〜18:05 鳥栖市中央公民館ホール 無料


 鳥栖で開かれた「佐賀新聞演劇祭in鳥栖」を観に行った。5劇団で5時間半にもおよぶイベントだったが、初めて観る劇団も多くて飽きさせなかった。
 「劇団怒幻鳥栖ッ都」の舞台が抜群におもしろかった。

○バビロニアカンフーマン「LAST RED」(作:光安和幸 演出:小牧十朗)
 脚本は、2001年3月に、劇団ギャングママMAX により福岡で上演されたもの。そのオリジナルの舞台は観ていないが、この舞台は俳優の個性豊かで表現力もあり、たぶんオリジナルよりおもしろくなっているのではないかとと思う。
 マイドリアンという悪と戦う5人の勇士の話。リーダーのレッドがマイドリアンに拉致されて、マイドリアンの新しい象徴・ノーライフの容れものになるかと思えば、マイドリアンの将軍・Zが勇士側に寝返ったりと、根拠のわからないストーリー展開で甘ったるい。ストーリーは甘ったるいけれども、なるべくきちんと見せようとする姿勢はあり、個性的な俳優たちのけっこう運動能力の高いアクションでいちおう最後まで見せる。
 ほんとうの悪人を登場させきれないというのをどう見ればいいのだろうか。簡単に変質するマイドリアンの将軍・Zには、悪のアイデンティティはない。そんなんじゃつまらない。結局、さしたる根拠もなく変転するゲームの感覚で、ドラマとしては希薄だ。
 個性的な俳優のなかでもマイドリアンの幹部・ルナの 古賀あいら が色っぽく魅せる。上演時間は1時間40分。

○マシュー団「オイディプス王」(作:ソフォクレス 演出:中島秀麿)
 ギリシア悲劇の言葉は重いから、その重さに負けまいと骨太な舞台を目ざしたのはわかるが、あまりに一本調子に過ぎた。
 はじめからオイディプスはギラギラと激しく暗い。だから、予言が実現されていることがわかっていく過程でのオイディプスの衝撃が伝わってこない。この演出の基本的なところも押さえないミスが致命的だ。
 手の置き場に悩み続けているような類型的な動きも気になった。全体的に工夫の余地がありすぎるというレベルだ。上演時間は1時間20分。

○鳥栖市民劇団「鳥栖仁○加」
 4組の演者による16の仁○加。大人のペア、中学生の男子ペア、中学生の女子ペア、そして子どもの男女ペア。
 仁○加は、ひたすら落ちを目ざすショートコント。その落ちはそんなに大したもんじゃない。例えば、「鳥栖スタジアム」では「サッカー」と「坂」をかけ、「老松神社」ではデートで「オイ待つ」とかける。あと、「電気」と「伝記」、「テラス」と「照らす」、「スイマー」と「睡魔」などなどだが、やや無理しているのもある。演者は楽しく軽く演じているのがいい。上演時間は25分。

○怒幻鳥栖ッ都「コトバノ・・・むこうに」(作・演出:平田亮)
 9人の人物がコートに帽子ですり足気味に歩くという、ススキメソッドのような動きという始まりかただが、ムダな動きがなくそれらしく決まっていてそれだけでも楽しい。そのあとお思いもかけないような展開にびっくりしどうしになる。
 ふたりがお尻を突き合わせて真っ赤なベンチ。そのまわりに、キスをしホテルに行き帰ってきて別れるというカップル(女性も男優が演じる)、食べ物がなくて死んでしまう4匹の昆虫、そして浮浪者。その浮浪者の小便をカップルの男がうまそうに飲むというところまでやる。それが、非常にきちんとした切れのいい動きでやられる。
 おぞましいところにまであえてグイと突っ込むことで、真実がひん剥かれる。その手際のよさを大いに楽しんだ。レベルが高い。総合的な質の高さでこの劇団に匹敵する劇団は、残念ながら福岡にはない。上演時間は50分。

○劇囚芝居屋「メロンを買いに」(作:荒川徳臣 演出:空閑薫)
 メロンにまつわる思いを描いたひとり芝居。喫茶店で友人と話している話をひとりで演じるが、メロンへの思いが溢れると、舞台中央で大仰な演技を繰りひろげる。
 若いころに人にバカにされたみじめな思いを、バカにした若人が食べていたメロンを自分で買って食うことで、トラウマになっていたコンプレックスにピリオドを打つという話。わからないでもないけれど、演るほうにやや思い入れが強すぎて、いろいろ講釈されても「そんなもんかな」という感じだった。上演時間は35分。


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