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《2003.9月−13》

らしくない貧相さ
【トレモロとオルタナ  (あなピグモ捕獲団)】

作・演出:福永郁央
28日(日) 13:05〜16:35 ぽんプラザホール 1800円


 アイディアのボリュームがなさ過ぎる。そこを何とか形でごまかそうとしているがどうしようもなくて、コンテンツのなさが露わになってしまった舞台だった。
 その証拠は―とにかく眠くて眠くて、時に眠ってしまっていたこと。その思いの弱さとコンテンツのなさからくる、透けて見えるような福永作品らしくない貧相さには不満が大きい。

 アイディアとして基本になっているのは、題名にもなっている「正調と破調」。
 元作家の書いた文の内容がどんどん現実化していく。書かれた「犬が飛び、月が消える」が現実になるというという突飛さも、この作品においてはトレモロ(正調)だ。
 そしてオルタナ(破調)は、もう一歩、出版された本の原稿を修正すれば出版された本の内容がリアルタイムで変わることで、その突飛ささえもさらに壊す。飛んでいる犬を撃ち落したらそれは犬ではなくて人間で、遠ざかっていた月が爆発する。

 こう書くとおもしろそうだが、肉づけが弱くパワーを感じさせない。福永らしいレトリックも、この作品では底が浅く不発だ。
 質的な軽さをねらったのかもしれないが、繰り返したり間延びしたりつまらん語呂合わせをしたりと、必死で水増した結果の切れ味のない軽さでしかない。福永作品はもともとポエムなんだから、「この作品はポエムだ」とあえて言っているのはコンテンツのなさの自己弁護に過ぎない。

 「次回12月の公演を福岡最終公演とし、東京に出る」ということが告知された。
 東京に自爆しに行くの?というのが私の正直な感想。「鶏口となるも牛後となるなかれ」だ。福岡の演劇を鶏からダチョウにするという手だってある。まぁ、福岡のよさがよくわかるだろうから、そのときは片意地を張らずにさっさと戻ってくればいい。

 この作品は3ステージ。若干空席があった。


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