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《2003.11月−1》

あざやかすぎる
【いっこく堂 人間VS人形 (筑紫野市管理公社)】

脚本:藤井青銅、のじしんいち、向井勉 演出:藤井青銅
1日(土) 16:05〜18:05 筑紫野市文化会館 4000円


 いっこく堂 のボイス・イリュージョンツアー2003と銘うたれた「人間VS人形」の公演は、鮮やかすぎてそのすごさがなかなかわからないというレベルだった。
 30体という多くの人形を駆使した腹話術はみごとで、2時間たっぷりと堪能した。

 前半の1時間は、バラエティに富んだいろんな形式の腹話術で遊ばせてくれる。
 「クイズ、この人あの人どんな人!?」は、テレビのクイズ番組を、アシスタント、回答者から出題者、ゲストまでひとりでやってしまう。回答者である、歌手・ジニー、ガイコツ、サラリーマン・サムライ の自分の興味にばかり走ってしまう回答で笑わせる。約15分。
 「動物園の飼育係」は、逃げた鳥の サトル を探す飼育係の動物たちとのやりとりで笑わせる。サルノスケ(チンパンジー)、ブーちゃん(豚)、アナコンダ(大蛇)、スカーレット(牝狐)、オペーナくん(熊)との短い会話がテンポいい。作業服の帽子に「(有)土田商店」と書いてあるのがちょっと気になった。15分弱。
 「音のある風景」は「にぎやかな電化生活」と題して、「しゃべる電子レンジ」ではオフクロモードや新妻モードの切り替えで笑わせ、「体育会系の冷蔵庫」では飲み物まで指示する冷蔵庫の言い草で笑わせ、「地球にやさしい洗濯機」では洗濯機が洗濯方法に文句をつけ、はては「裏返してもう一日着な!」と洗濯を拒否するやりとりが笑わせる。ラストの「不満のある掃除機」まで、10分強。
 「警官コント」は青島幸男の脚本で、自転車の老人を警官が疑って誇張し犯罪者にしてしまう、というコントで、「こんな警官いたら困るでしょ」と落とす。10分弱。
 「タマオキいっこく歌謡ショー」は、ジョージ、田吾作、サトル、師匠など6人が、「いとしのエリー」や「川の流れのように」や「世界にひとつだけの花」を、人形の個性に合わせて唄う。約10分。

 それらの間の場面転換のつなぎには、2体の人形がいっこく堂の「全国ツアー中のトラブル」、「全国ツアー中の気分転換」とかのベスト3をしゃべる。これが録音なのか生なのかわからない。着替えしながらしゃべっているのだろうか。
 「ダメだったこと」のベスト(?)1に「セリフを忘れて、人形に訊く」というのがあって、ここまで見てきたら、それもありかな、と思わせられてしまう。

 後半は本格的なお芝居仕立てで、家庭ドラマ。
 酔っ払った友人・ダンを連れて帰ってきたいっこく。ふたりは大学の腹話術同好会の仲間だが、そのことを妻にも話していないが、当時使ったチャーリー人形を大事に持っている。人形(というかマネキン)のダンにチャーリー人形を操らせるという不可思議なシーンもある。
 いっこくの妻と車椅子の母は仲が悪い。母は妻を幻想だと言い、ダンもそれを主張するが、妻は母こそすでに亡くなっていていっこくの幻想だという。
 そこに医者が登場し、これが人形と生活する実験だったことを明かす。人形が自分は人間だと主張しはじめたので実験は中止だという。そこでいっこくは、「人形に命が宿っているような気がしてきた」と言い、医者に向かって「あなたも人形なんですよ!」と言う。そこで暗転。明るくなったとき、いっこくが人形になっていた。人間と人形が錯綜し、「自分だけが人間だと思っていても、実はみんな人形なんだ」と、怖い結末。約45分。

 言葉ではおもしろさが伝わるはずもないのに、たくさん書いてしまった。
 ここではきょう1ステージ。若干空席があった。


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