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《2003.11月−4》

どうしようもなくつまらない舞台
【スタートライン (フリーダム)】

作・演出:坂口聡
3日(月・祝) 11:10〜13:25 甘棠館Show劇場 2500円


 どうしようもなくつまらない舞台だ。脚本も演出も演技も甘ったれている。
 ラストの25分のためにすべてがあるという作品だ。何もかもがあせって説明される25分間のなかにも問題はあるが、その前の1時間45分はみごとなまでの空疎さだ。この内容だったら全部で1時間も要らない。間延びもはなはだしくて、白けた。

 10年前、廃校になることが決まった中学校での駅伝大会でユリアとスミレは落雷にあい、ユリアは死んでしまう。
 10年後、スター作家になったスミレは、プロダクションの社長に休みを要求するが拒否される。それどころか、スミレが社長の秘密を握っているとして、社長は刑事を使ってスミレを追いまわし殺そうとする。その途中で、秘密を知ったスミレの先生(社長の昔からの友人でもある)を社長は殺す。
 果ては、実は社長はスミレの父親だったというメチャクチャさだ。

 ひん曲がった人物が、ひん曲がった身勝手なストーリーをウロウロする脚本は、支離滅裂で理解不能だ。推敲しているとも思えないし、セリフにはなっていない。
 くだらんギャグとつまらん話題。相手役の動きをわざわざ解説したりと、どうでもいいセリフばかりで、大切なことを観客にわからせる気などない。人物が途中で変質して統一性を欠くし、何で刑事が社長の用心棒かなど理不尽なところは枚挙にいとまがなく、リアリティなどどこを探しても見つからない。
 人物も魅力がない。下降志向しかない主人公にどうすれば同調できるというのだろう。
 リストラされた男が10年後プロダクションの社長になっていて、わが子を虐待はするわ、旧友は殺すわ、果ては自分の子どもにまでピストルを向ける。何のためにこの男はここまでやらねばならないのか、死の扱い方の軽さも含めて何一つ納得させるものはない。ご都合主義が過ぎる。

 演出も演技も、低級なクスグリばかりに終始する。
 人に見せるようなレベルにない物まねを延々とやったり、大げさな動きやわざと歪んだ顔をしたり、下らん話題をバカさ丸出しでしゃべったりと、もう醜悪でさえある。このような演劇的幼児性にはつきあってはおられない。客が金を払っていることを、きれいさっぱり忘れている。
 唯一見せたのは、アクションが決まったカーテンコール後の予告編だけだ。そのようなアクションをなぜ本編で有効に使わないのか理解に苦しむ。

 16ページにわたるパンフレットのうち8ページが広告。それはそれでいい。
 問題なのは、広告や協賛の企業名を上演中に言う(!)から、広告・協賛してくれというバカさ! 実際、前説で全企業名を言っただけではあきたらず、本編のなかでも20数社の社名を連呼するという気違い沙汰をやってのける。作品と観客を何と思っているんだろう。非常識極まる。
 こんな気分の悪くなる公演はお断りだ。この集団の芝居は二度と観ない。

 この舞台は、演劇集団フリーダムの旗揚げ公演で、10月31日からきょうまで7ステージ。満席だった。


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