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《2003.11月−7》

映像と活弁が作る不可思議な世界
【山田広野の活弁全国ロードショー (山田広野・BIO-TID)】

構成:山田広野
13日(木) 19:05〜20:25 ビブレホール 2000円


 自作の無声短編映画に、自分で活弁するという、活弁映画会だ。
 何とも不思議な雰囲気を持った映像に、軽すぎもせずしつこくもなくつけられた活弁はなかなか楽しめて、不可思議な世界を体験させてくれる。

 8本の映画は、次のような内容。
 「ダミー・オズマ」は実験人形シリーズのひとつで、アベックの女性が実はリモートで操る人形という話。ダッチワイフみたいに空気が抜けてペシャンコになり、ダミー・オズマがあわてて空気を吹き込む。そのアイデアのバカバカしさがおかしい。シリーズものの1編で、上映時間約5分。
 「女囚・マリー」は、脱獄した女囚たちとそれを追う看守とのバトル。ポリバケツに入って近づく看守がおもしろい。これもシリーズものの1編で、上映時間約5分。
 「ぼくの陰陽師」は、悪霊さがしをして除霊するのは単なる手品。それをドキュメンタリー・タッチで見せる。約8分。
 「ター坊!君は悪魔だよ」は、人気俳優・水橋研二も出演する大作。高校生の仲間が、17年後に再会。高校生の時と同じ映像を、セリフだけ変えて17年後のシーンにしてしまう活弁がみごと。上映時間約13分。この大作でも、撮影時間6時間で、編集も含めて完成まで2日という。普通の作品は、一日で撮影・編集から上映までやってしまうらしい。

 「実録・DV刑事」は、過激などす黒さをねらった作品というふれこみだが、映像はそれほど重くなく、運びもテンポいい。女刑事が「ペニス・バンド」というのをつけて、どんどん伸びるペニスで男どもを突き刺して、「チ○ポ三兄弟!」というラストが笑わせる。約10分
 「ソワレの心臓」は学園ドラマ。ソワレの肉体をめぐってのバトルロワイヤルで勝ったのは、なんとチャーリー校長という落ち。約10分。
 「ぼくら青春」は、暗い男がかってのオフ会の青春を思い出す。そして、「あのときの自分にもどりたい」と言って、ほんとにもどってしまう。約10分。
 「ぼくの大統領」は、TVに映った米大統領との愛のために、言い寄る女性を相手にしない男の話。ブッシュの映像につけるセリフが笑わせる。約5分。

 どぎつい内容を、軽くて不安定な生きのいい映像と、さらりと軽いがときに突っ込むというメリハリのついた活弁で、短い作品ながらストーリーは疾走する。
 映像は、意図的に汚したという作りだが、俳優が個性的でなかなかよくて、そのためもあってグロさは強くない。
 活弁は、弁士の姿形に似た女性的なしゃべりを基本とするが、男性のドスの効いた声など迫力がある。クライマックスでは、別の世界に連れていかれたような錯覚に陥るほど引き込まれる一瞬がある。ただ全体的には濃密すぎなくて、映像も含めて醒めたようなところが魅力といえる。
 山田広野はスーツにハンチングというスタイルで、マイクをもってしゃべる。音楽は楽団ではなくて録音。

 きょうの観客は150人というところだろうか。ほぼ満席だった。あすもう1ステージある。
 久々にビブレホールに行った。ここではほぼ毎日音楽ライブが行われている。


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