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《2003.11月−9》

くだらない修飾が多すぎる脚本
【歪み (偽善事業団)】

作:池田祐樹 演出:安倍祐馬
16日(日) 15:05〜15:55 テアトルはこざき 800円


 的外れだったり過剰だったりする修飾は、脚本にとって逆効果だ。
 この公演の脚本は、変な修飾にこだわり、肝心の書き込みが弱く、印象がぼやけてしまった。

 女ふたりだけの芝居。
 銀行でおもちゃのピストルを振りまわしたために銀行強盗になってしまったミカと、その連れのジュンとトモコ。トモコはトイレに行ったままで登場しない。
 警官隊に包囲されるなかで、カズオという男をめぐる三人の話が展開する。要は四角関係で、ジュンはトモコを殺し、ミカはジュンを殺す。

 「意図はわかる」という芝居だが、それは、表現というレベルに達していないということ。だからそれは「何も感じなかった」と同義語だ。意図だけわからせてもしかたがない。
 なんという変テコでくだらない修飾ばかりなんだろう。カズオ「キムタク」似かどうかの会話で時間を食い、「沢山」を「さわやま」と言いまちがい(読みまちがいじゃない!)、「控えめで茶を沸かす」というギャグ以前や、「山田くん、座布団一枚!!」の手垢のついたギャグなどなど、そんなくだらん修飾ばかりだ。意図的に白けさせようとしているんじゃないの?というレベルで、逆効果だ。
 そのような無駄口にはガマンがならない。そんな字数があったら、それぞれの人物の思いをちゃんと書き込んでくれよ。状況の変化もわかるようにちゃんと書き込んでくれよ。扱っているのは、四角関係がもたらす殺人だよ。この脚本のどこに、殺人を納得させるようなものがあるというのよ。

 そのような脚本の致命的な欠点に、演出も演技も疑問を持たずに乗っかっている。
 演出は、緊迫感なし。せめて状況がガラリと変わるところをちゃんと際立たせれば少しはおもしろくなったはずだ。
 演技は超平板。ここでの殺人など、台所のゴキブリを殺すほどのインパクトしかない。

 この公演は、劇団☆偽善事業団の第3回公演で、きのうときょうで5ステージ。私の観た回は10人弱の観客だった。


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