2時間半近い一幕の舞台を、みごとに作り上げた力量を、まず評価する。
これだけのものを書ける劇作家のところに、いいスタッフ・キャストが集まって、充実した舞台だった。
大手広告代理店の末端の子会社・ハンエー通信社。いわくありの人々が、CMのコンペへの参加を通して、互いを分かりあうという話。
いくつもの恋といくつもの親子関係を担う10人の人物。その役どころのそれぞれに目配りが利いていて、入り組みあう人物をうまくからませ、ストーリーを展開する。
やや甘いストーリー展開だが、どうしてそうなるかは徹底的にわかりやすく語られ、すべて納得がいく。語りすぎて余韻がなくなったと思えるくらいだが、そこは感情をじっくりと引っぱることで対応する。それがそれほど臭くならないのは、人物の強い思いをきちんと出そうとしているからだ。
ていねいなつくりだ。
そのていねいさによって、単純なサクセスストーリーともいうべき内容が、甘すぎたりお涙ちょうだいになることなく、なんとか現実性につなぎとめられている。全体がメルヘンで、見ていて気持ちよくなり元気が出ることをねらった作品だが、「なんで?」という疑問符が付く荒唐無稽さを、ていねいさで塗りかぶせる。
人間関係がからみすぎ密すぎる上に、ラストの想定が早くついてしまうという欠点はあるが、ハッピーエンドに向かって一直線とばかりは見せず、何とかかいくぐったと見せるのは脚本の力だろう。ちょっとごまかされたかなと思うところもがないこともないが。
俳優もそれぞれの役を、ていねいに生き生きと演じていた。
この舞台は3日間6ステージ。満席だった。