元気のいい舞台で、好感が持てる。
前半のテンポのよさが、後半に滞ってしまったのが残念だった。脚本と演出に、もうひと工夫あればよかった。
幼なじみの3人、そのひとりスミレをめぐるシズオと晶の三角関係の物語を、記憶の買占めという趣向をからめ、ファンタジックに進める。
その三角関係が見えるまでの、全体の三分の一くらいまではテンポいい。しかし、そのいちばんのことがわかってしまってからの展開は、ややくどい。
その三分の一までは、警察に保護された男・薫の自分探し。他人の記憶が埋め込まれていることがわかって、本来のシズオをとり戻し、恋人スミレの死と、スミレを愛していた晶の存在がわかる。謎解きのおもしろさもあるストーリーを、つかこうへい調の演出でうまく引っ張っていく。うまい照明も効果を上げている。
そのあとはシズオと晶のバトルだが、関係が見えてしまっていることもあってかなり冗長だ。
薫としての記憶は、ラベンダという過去の記憶の売買までやっている記憶管理員に埋め込まれたものだったが、ラベンダがスミレの生まれかわりというのは、同じ俳優が演じているからすぐわかる。シズオに薫の記憶を植え込んだのは、スミレの記憶を独占したい晶のしわざ。そこまでいくのに説明が多すぎる脚本で、観念的なセリフも多く、元気のいい演技とはいえ、平板な印象になるのをまぬがれない。
5人の役のうち3人が男性だが、演じるのは女優で、ほとんど違和感がなく演じているのはみごとだ。ダンスシーンがごく自然に挿入されるのもいい。
この舞台はきのうときょうで3ステージ。40人くらいの観客だった。