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《2003.12月−7》

大きな構想ねらいだが、ドラマの推進力が弱い
【たまねぎのしん (HoleBrothers)】

作・演出:幸田真洋
20日(土) 19:10〜21:15 ぽんプラザホール 1500円


 いくつもの世界を交錯させた大きな深い構成をねらった作品だが、全体を繋ぎとめ推進させるものが弱く、せっかくの個々のシーンが平板なまま放置されて、立ち上がらない。

 地球に住んでいた恋人が、ある星を買い取り別荘にする。そこヤンバルクイナには3人の宗教家が住み、町まであり、宇宙のゴミ回収をやっている。地球からさらに、「ヤコブの印」という宝を探しに四姉妹(一人はオカマ)とオカマの男の恋人がやってくる。
 「ヤコブの印」の争奪をめぐる話に恋模様がからんで話は進むが、結局、その地ヤンバルクイナは、ヤコブから攻め滅ぼされる。

 オープニングから、それぞれのシーンはなかなかカッコいい。
 しかし、そのシーンがなかなか繋がらない。時間的な関係がわかりにくいのもあるが、興味を繋ぐものが弱く、展開に期待できないのが致命的だ。
 その興味を繋ぐものの第一である「ヤコブの印」が何ともつまらない代物で、選挙に勝つために必要だと四姉妹が探しにきたもの。それも鉱山の人夫長によって簡単に見つかる。そんなものが、とてもとても一国を動かすなどとはとても思えず、関心を惹かず、ドラマの推進力にならない。

 同じ人物がいろんな役を演じ、俳優の演技はよくて演じ分けができてはいるが、それぞれのシーンの場所や時間的関係がわかりやすいとはいえないのがつらい。それは私の勘の鈍さに加え、推進力が弱いために雑然とした印象になり、それで襲われた睡魔のためでもある。
 観客の意識の流れを整理し、冗長なところは刈り込み、不分明なところはわかりやすくしたがいい。直截なことばが多すぎるのも気になる

 「たまねぎのしん」は、2001年8月の再演を観ている。今年の秋には大野城まどかぴあでも同名の作品が上演されているが、上演のたびに大幅な改訂が施されていて、完全に別の作品のようだ。だったらバージョン名を題名に入れるべきではないだろうか。

 この舞台はきょうとあすで3ステージ。若干空席があった。


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