九産大演劇研究部らしいB級エンターテインメント作品で、なんとか楽しめるはするが、大事なところのポカで作品としてはC級になり下がってしまった。
甘さにも限度があるということだ。いくら擬闘を見せる芝居とはいえ、ドラマの質を無視していいということにはならない。
17才の坂本竜馬が、ペリー提督の船に乗り込んで、中国人の料理人と恋をするという話。それに女性副官のアヘン密売の悪だくみがからむ。
竜馬もペリーも単なる名前借りで、手前勝手なストーリーには、恋とアドベンチャーの物語にいかに擬闘を多くからめるかに主眼が置かれている。
それはそれでいいし、気軽に観れば練習たっぷりの擬闘は楽しめる。ラブストーリーも何の障壁もない気楽さではあるが、それなりにプリティで、よけいなことを考えなければ楽しめはする。
そのような荒唐無稽さは、ねらったところでもあるからそれでいいように見えるが、納得しがたいアナポコとも言える甘さが全体をガタガタにして、構成を突き崩してしまう。そうなれば、せっかくの擬闘も意味が薄くなり、急に色あせてくることになる。
例えば、副官と手を組んでアヘン取引を進めていた清国の大使が、竜馬のひと言で一瞬にして寝返る―というのはあんまりだろう。変化の根拠は希薄で、何も悩みはしない。
竜馬の恋人である中国人料理人のトラウマも、父を殺した人間につきしたがっている事実のために支離滅裂としか映らない。
擬闘を際立たせるためにもドラマは必要だが、矛盾や理不尽はクレバスと同じで、そこに落ちこんだら観客は二度と元には戻れない。ドラマをみごとに壊してしまうのだ。
この舞台はきのうときょうで3ステージ。30人くらいの観客だった。
客席の最前列に先輩たちが陣取っていて、原大介さんなど、上演中にアンケート用紙にびっしり大量のダメを書き込んでいる。