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《2004.2月−8》

エンターテインメント、それもかなり上質の
【冬の博多 武藤祭 (新日本プロレス)】

構成:新日本プロレス
15日(日) 16:10〜19:00 博多スターレーン 招待券


 女子プロレスは観たことがあったが、本物のプロレスを観るのは今回が初めて。そのプロレスは、完全にエンターテインメントだった。それも、かなり上質のエンターテインメントで、少しは真剣勝負の試合も見たい、と思ったほどだった。

 全体の構成は、前半は軽いものでプロレスの世界に誘い、後半は多くのレスラーを登場させてその組み合わせを楽しませる。
 技は、相手を倒すというよりは、ロープ技やコーナー技はむろんのこと、投げ技や足技などまで、お客を楽しませることに主眼が置かれている。相手を蹴るのに派手に一回転するなど、却って隙を作ることをわざわざするのだ。
 コスチュームや化粧で善玉・悪玉をはっきりさせ、観客に対しどちらかに肩入れしやすくしているのも、盛り上げる手法だろう。悪役が啖呵を切るところでは、ちゃんとマイクが用意されるというのもおもしろい。

 オープニング、燃える太刀などを使った忍者ショーが5分ほどあって、全日本プロレスの武藤社長のあいさつ。そこに、悪役6人組が乱入する。悪役が去って、試合開始。

○石狩太一 VS Hi69(15分一本勝負)
 若手による前座。かっこいい 石狩太一 が人気で、レフリーも石狩に露骨に味方するが、その石狩、やや単調な攻めで Hi69 の攻勢にたじたじ。しかし5分過ぎのコールで反攻を開始して、2カウントの取り合いのあと、8分過ぎて、 Hi69 に一瞬の隙をつかれて負け。悄然と去っていく 石狩 に若い女性から「かわいそう!」の声。

○土方隆司・渕正信 VS 平井伸和・グラン浜田(タッグ・マッチ 20分一本勝負)
 ユーモアをねらった、相撲のしょっきりのような試合。チームは若手と熟年の組み合わせで、渕と浜田は50歳代で笑い担当。顔をつかんだり、場外に落として飛びかかったりという即物的な笑いに加え、足固めされている味方を助けるための相手へのキックで味方がダメージを受けるというような計算された笑いもあり、楽しい。試合結果は時間切れ引き分け。

○保坂秀樹・荒谷望誉 VS 河野真幸・奥村茂雄(タッグ・マッチ 30分一本勝負)
 河野・奥村 の善玉組が開始後10分間は一方的な攻勢。そのあと一進一退から悪玉優勢になって、15分で悪玉組の勝ち。

 ここで約25分の休憩。

○宮本和志・本間朋晃 VS MAZDA・NOSAWA(タッグ・マッチ 30分一本勝負)
 MAZDA・NOSAWA の悪役組が入場するとき、アルミ製(!)のバケツに、竹刀やギターや、なぜかぬいぐるみまである反則道具をリングに投げ込む。竹刀で殴ったりの反則はいっぱいあるが、試合としてはダイナミックでスピーディ。 宮本 が、二人から攻められて、相手の技を切り返して二人いっしょにひっくり返すという大技は、いかにもパフォーマンスだが楽しめる。その 宮本 がバケツで頭を叩かれて、ひるんだ隙を突かれて善玉組の負け。それまで10分強を楽しませてくれる。

○カズ・ハヤシ・小島聡・川田利明 VS ジャマール・ザ・グラジエーター・太陽ケア(タッグ・マッチ 45分一本勝負)
 3人のタッグ・マッチはいくつもの対戦相手の組み合わせができて、それが楽しい。3人には役割があり、集中攻撃を喰らって負けるという役も決まっているようだ。ここではそれが カズ・ハヤシ で、開始20分後に カズ・ハヤシ が押さえ込まれて、善玉組の負け。不満の善玉組は怒り、勝敗決着後も乱闘が続いた。

○嵐・A・T・ブッチャー・武藤敬司 VS ブキャナン・ディー・ロー・ブラウン・TAKAみちのく(タッグ・マッチ 60分一本勝負)
 最後 武藤敬司 が花火の中を派手なコスチュームで登場。それは脱いでも、マスクは最後まで取らない。ここでは、A・T・ブッチャー が流血役で、TAKAみちのく が負け役。入場したとき物販コーナーにいた A・T・ブッチャー(この人、なんと68歳!) の額に5、6本もある大きな傷跡にびっくりした。試合でもそこから血が出るが、痛々しい感じはしない。試合の最中に武藤 の口から緑のしぶきや赤いしぶきを噴出すというのはちょっとやりすぎの感じ。試合は開始15分、武藤 が TAKAみちのく を押さえ込んで善玉組の勝ち。

 レスラーは、勝負を見せるのではなくて、観客を楽しませるのがしごとだから、レスリングの技術に加え、強烈な個性と演技力がある人が多い。
 会場は広く、かなり空席があった。若い女性の観客がけっこう多かった。


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