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《2004.2月−11》

早替わりの手際にびっくり
【二月博多座花形歌舞伎 (松竹・博多座)】

構成:松竹・博多座
21日(土) 11:00〜14:55 博多座 4200円


 福助の「お染の七役 <於染久松色讀販>」での早替わりが楽しかった。松緑と亀治郎の「四変化 弥生の花浅草祭」も楽しめた。
 でも今月の歌舞伎は、「大歌舞伎」ではなくて「花形歌舞伎」で、かなりサラッとした印象だ。全体的には軽くて動きがいいのは好感が持てる。年齢的にはずいぶん若い役者による舞台だから、大看板が出ない分、重みに欠けるのはしかたがない。演目としては、歌舞伎らしい荒事の演目がひとつはほしい。

○四変化 弥生の花浅草祭
 浅草の三社祭に登場する山車の上に飾られた人形をモチーフに、いくつもの踊りを次々に踊っていく四変化の舞踊。全体的に松緑は動きが大きくダイナミックで、亀治郎はやや単調だが形はいい。
〔神功皇后と竹内宿禰〕
 亀治郎の神功皇后と松緑の竹内宿禰。松緑は踊りから楽しさがあふれ、ユーモアもたっぷりだ。上演時間7分。
〔三社祭〕
 船頭ふたりの踊り。途中2回衣装が変わる。最後は中国服のような衣装に、善玉(亀治郎)と悪玉(松緑)と書いた面をかぶる。同じ動きをするペアの踊りも、動きがいいから楽しめる。上演時間18分。
〔通人・野暮大尽〕
 通人(亀治郎)と国侍(松緑)の対比をみせる踊りだが、国侍のセンス、そんなに悪くないという作りだ。上演時間5分。
〔石橋〕
 赤と白の連獅子。激しくダイナミックな動きがいい。上演時間5分。

○お染の七役 <於染久松色讀販>
 玉三郎の「お染の七役」をビデオ録画して見たが、この舞台を観て、早替わりのおもしろさは残念ながら映像では伝わらないという当たり前のことが、非常によくわかった。
 演じ分ける七役は、男ひとりに女6人。娘から芸者、悪婆まで、その女の幅の広さをどう演じるかも見所だが、福助はちょっと極端に、その特徴を切れ味よく強調する。
 三幕七場の1時間半ばかりの上演時間に、役を25回以上も変わる。引っ込んだと思ったらわずか数秒で別の役で別のところから出てくるという手際のよさには、もうびっくりしてしまう。そんなけれんをやりながら、話はきっちり世話物というのも、何ともおもしろい。早替わりだけでなく、ドラマとして見せるべきところはきっちりと見せる。
 福助の独壇場だが、鬼門の喜兵衛役の愛之助も、この悪役に入れ込んでいてなかなか見せる。この愛之助、仁左衛門の若いころによく似ているから姻戚かと思えば、大阪の一般家庭に生まれた人だと「歌舞伎修行 片岡愛之助の青春」(NHK出版)に書いてある。
 福助の舞台を観てから、小学館文庫から出たばかりの「中村福助」という写真集を見たが、当然ながら実物が圧倒的にいい。福助は、写真写りはあまりよくないようだ。

 この公演は、1日から25日まで35ステージ。
 今月の花形歌舞伎の出演者には大看板がおらず、出演者にやや重みが欠けたことと、昼夜同一演目のせいか、空席が目立った。


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