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《2004.3月−2》

これはゲームの演劇版だ
【秋桜アルティメトリミッツ (九州産業大学演劇研究部) 】

原作:田中竜一 脚本:田中真美子 演出:田中真美子・田中竜一 
7日(日) 14:10〜15:40 九州産業大学内学友会棟1階大会議室 無料


 九産大らしいB級エンターテインメントだが、そのボリュームたっぷりさがなかなかよかった。
 ストーリーも人物もややありきたりながら、そこに観客を楽しませながら自らも楽しむ工夫を、たくさん詰め込んでいた。

 宇宙ものだ。
 平和を願うエウロバ星の姫・イーダと、宇宙征服をたくらむ木星の女王・キティとの、アルティメトリミッツという宝石をめぐる戦いを舞台に、イーダを助ける アドニスと、キティに育てられたデータとが実は生き別れた姉弟だったという設定。

 ボリュームたっぷりなのは、出演者みんなに見せ場を作ろうとした結果だとも取れる。けっこう多い登場人物のための見せ場を盛り上げるために、人物の設定もキャラもひとひねりはしている。それは、はじめからひねられているところもあり、もともとゲームキャラのために実在感が薄いから、やや軽くひねりが効くというのもあるだろう。
 人物が変わるところでやや書き込みが薄いかな、と思うところはあるが、大きな破綻はない。真の悪役がマリオとわかっても、血で血を洗うといった戦いにはならない。この公演では、刀さえも使わない素手でのアクションは、まあ楽しめる。

 工夫というところをもう少し見ていこう。
 ギャグの幅はけっこう広い。マリオは山下清ふうのしゃべりだし、パンダのジェスチャーは笑わせる。リストラサラリーマンが少しづつ自信をつけていくところなども楽しめる。「○○(という話題)から離れろ!」といったら、みんなその人から離れるという吉本新喜劇そのままのギャグもある。うぅん、まぁ良しとするか。

 だが、ここまで書いてきてやっと気がついた。それは、この舞台がゲームを演劇化したものだということ。キャラだけではなく、全体がゲームそのものなのだ。それを今ごろ気がつくとは、私はほんとうに鈍いが、ゲームをしないから、それもしかたがないか。
 そうみれば、擬闘もゲームのそれだ。考えてみれば、擬闘を見せる九産大演劇研究部のこのところの作品には、ゲーム調の作品が多すぎる気がする。時には、シリアス、前衛的、リアルという傾向の作品にも取り組んでもらいたい。恋愛も、ゲームのお手軽さではないものをちゃんと描いてほしい。

 この舞台はきのうときょうで3ステージ。超満員だった。


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