福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ


《2004.3月−5》

アイディアたっぷり、ケイコたっぷり
【ボクらはみんな生きている。 (福岡市文化芸術振興財団)】

作・演出:大塚ムネト
14日(日) 14:05〜15:40 ぽんプラザホール 1000円


 大塚ムネトを講師とする演劇ワークショップの発表公演だ。
 多くのワークショップ参加者全員をうまくキャスティングして、練習の成果があらわれた舞台で、楽しめた。

 オープニング、参加者への「生きている実感を感じる時」というインタビュー映像からスタート。
 メインの舞台は、地球の時間が進まなくなった――という状況設定。いかにも広い展開ができそうなこの設定が成功している。
 なぜ時間が進まなくなったかという謎はラスト近くに解き明かされるが、舞台はその謎解きよりもむしろ「生きている」とはどいうことかにこだわる。「生きなくなった」という状況にいる人間が「生きているということ」をどう意識するかを通して、「生きていること」の意味を問い、描くことになる。

 脚本は、状況設定と、そこまで観客をつれて行く手際がいい。多彩な人物の思いもよく描けているのは、参加者がみんなで話したことが反映されているからだろう。
 「おもらし同盟」など、現実にはありえないだろうけれど、あったらおもしろいというものを、いかにもありそうに具体的にしつこく書き込んでいて笑わせる。オシッコを漏らす心地よさ、それととつながった身体感覚を思い起こさせてうまく引っぱっている。
 会社に集まってきた人たちの夢想の、ハイジャックやミュージカルなど、何でもありでトコトンふくらませようという作りは楽しめる。

 参加者の演技は、しっかりケイコがなされていて、大半が初舞台とは思えないできだ。21人の参加者の役に「その他大勢」はいない。みんなちゃんとした個性的な役を、人によっては2役以上も演じている。
 それぞれのシーンのやりとりでは、みんな相手役とガッチリとからんでいる。

 何よりもいいのは、参加者の「楽しくてしかたがない」という思いが伝わってくること。演劇嫌いを作るワークショップが多いそうだが、このワークショップでは演劇好きが確実に増えたようで、喜ばしい。
 この公演は、きのうときょうで3ステージ。満席だった。


福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ