上演時間1時間強とそれほど長くない作品であるが、その構成や演出にいろんな表現上の工夫を取り入れ、その工夫が生きていた。女性を男が演じたり、全員でのダンスシーンをうまく挿入したりといった遊びも楽しかった。
抑えたきちんとした演技で印象はシンプル。センスのよさを感じさせた舞台だった。
4年前、単身赴任の父が死んだ。妻と子供たちにとっては、いまも自殺と信じることができないが、何も変わることのない日々が流れていた。
そんなとき、電話がかかってきた。それは、死んだ父からだった。
よくできた脚本だ。
4年前と今とを行き来しながら進めるといううまい構成もさることながら、各シーンをみごとに表現するセリフの簡潔さに感心する。入りくった感情までみごとに表現し、からみのポイントをはずさない。
ポイントとなる印鑑をはじめ、切れている台所の明かりなど、ストーリーに絡めたり心模様を映すために、道具をうまく使う。
3人の女性を(というか、主役の女性以外の8人の役の全部を)男性が演じるというのは、特に男女の会話のときにおもしろい効果を発揮する。言い寄る保険屋と妻とのからみは、変に生々しくならないが、何か変な気分にはさせる。
途中に挿入されるダンスは、歌のダサさを軽くかわすような、しゃれた振付けで楽しい。
装置は、きっちりと作られたLDK。飲み物も本物を使い、葬式場面では礼服と、衣裳や小道具もていねいで、全体的な気配りが効いている。
演技はごく自然に見えるけれど、自然に見えるまでていねいに練り上げられているということ。そのなかでも、保険屋役の加来靖弘の印象が強く残った。
この舞台は、2004年卒業公演で、きのうときょうで3ステージ。100人弱の会場は満席だった。