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《2004.3月−10》

軽薄さにも、パワーが要る
【ダメな大人のいい見本 (池田商会)】

作・演出:三原宏史
21日(日) 16:40〜18:00 テアトルはこざき 1000円


 軽薄さ丸出しという舞台で、正直「バカにするな!」という舞台だ。その軽薄さはもともとこの劇団の地でもあるし、照れ隠しも混じっている。
 軽薄であってもいいけれど、内輪ネタだったり、やるほうだけが勝手に楽しんでいるというつまらない軽薄さは、作品の品位を著しく落とすので考えたほうがいい。全体がそこでくくられてしまうのはもったいない。

 刑務所民営化の試行実施の話。
 応募して採用された3人の刑務官が、志願した3人の囚人を30日にわたってモニターする。その民営化刑務所のコンセプトは、「刑に服す≠罪を償う」ということ。だから、囚人に罪を償わせるために刑務所は、囚人をさらに苦しめることを実行する。

 前半は、つまらなさ過ぎ。
 公演予告のビデオ、PRだらけの前説で観客をしら〜っとさせたあとの本編も、どうでもいい幼稚で低俗な話ばかりで、聞くに耐えない。眠ってしまった。
 中盤になってやっと、教誨師のおっさんというの登場して、「刑に服す≠罪を償う」ということを説く。
 そしてそのことを、家族などとの面会で実証してみせることになる展開は、よけいなノイズが多すぎるが、まあ何とか見せる。ただ、そのあとの刑務所長の長々とした解説(種明かし)は不要だ。そこまで言わずに、感じさせてこその舞台だろう。

 演技は何とも中途半端だ。
 例えば、床に落ちたものを他人に食べさせるなど、アイディアのレベルが低すぎるところに、それを小手先で何とかしようとするか、無為無策に放り出されるから、とても見てはおられない。かわした演技はあってもいいが、かわすものさえないというところで、かわす演技をやってもムダだ。だから、舞台を空白の時間が支配する。
 そんななかでは、囚人役の久保大輔がまあまあ。出番は少ないが、女役の都地みゆきが切れのいい演技を見せる。

 この劇団を見ていると、軽薄さに徹するのもそれなりに大変なのがよくわかる。
 ここは、大きなしかけに加え、ピリッとした小技の集積で、シリアスを隠してしまうような、パワーのあるバカバカしさを期待する。それがこの劇団の持ち味だから。
 この舞台は、劇団池田商会第8回番外公演で、きのうときょうで8ステージ。12、3人の観客だった。


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