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《2004.3月−15》

違和感の向こうにある、快感
【MOON CHILD〜月の子 (Studio Life)】

原作:清水玲子 脚本・演出:倉田淳
31日(水) 19:05〜21:45 福岡市民会館・大ホール 招待券


 ファッショナブルで、エンターテインメント性の高い舞台だが、ただそれだけではない。性倒錯などで観客の気持ちを撫でたり引っ掻いたり。引きつけられるとすれば、そのような、ただの心地よさだけではないところだろうか。

 1985年、宇宙へと巣立っていった人魚族の三つ子のティルト・セツ・ベンジャミンが、産卵のためにマンハッタンに来る。
 いまは男のベンジャミンは、いきなり事故にあい、人魚としての記憶をなくして、人間のダンサー・アートに心を奪われる。

 1980年代後半の地球の環境に関する事件とからめる構想の大きさ、ストーリー展開の派手さは、原作がアニメならではと言える。
 その大きな構想を、人魚族と人間との恋などを使って、うまくファッショナブルに見せる。とにかく、展開も演技もテクニカルも、カッコよく見せることに全力投球している。派手で切れのいい舞台転換など、俳優の魅力以外でも観客を引き込む工夫は欠かさない。

 男性が女性を演じるという宝塚の裏返しだが、宝塚ほどには洗練されてあらず、男性である私には心地よくはない。
 そうではあっても、そのような違和感をいかにも無理やり押し切って、そのことが何となく快感に感じてしまうというのが不思議だ。ベンジャミンの及川健の、女性的でありながら女性にはなりきれないというそのあたりに、気持ち悪い感触を残しながらも惹かれるのかもしれない。

 この舞台は福岡では1ステージ。観客はもちろん若い女性が大部分で、若干空席があった。


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