生きのいい若手俳優がそろった公演で、楽しんでやっているその演技はそれなりには楽しめるが、なんか本格的な舞台という気がしない。幼稚さを残した、やや甘ったれた舞台という印象があった。
陳腐なストーリーのうえに、登場するのはどっかで見たようなキャラクタと、脚本に深みが出ない。そんな平板な脚本だから、膨らますには限界がある。演出は小手先に逃げ、演技にはアドリブ過剰でピリッとしたところが薄い。そんな舞台だった。
犬の世界の話。
血統犬が牛耳る世界で、雑種犬のイチは、純血の姫を助ける。満月の夜、姫が吠えれば願いがかなうという伝説のために、姫の争奪戦が展開される。
脚本は、それなりの形には見えるが、実はかなり甘い。
役は個性的でいいのだが、そのストーリー展開は、少しばかり行き過ぎでいていびつだ。その行き過ぎの典型が、骨のない悪役たち。すぐに変節してしまい、悪役となった理由があとづけで説明される。それが贖罪。それで悪者がひとりもいなくなってしまう、という淡白さだ。主役の知恵の出しようもなく、既定のハッピーエンドに向かって迷走気味ではあるがひたすら突っ走るばかり。迷走気味というのは、本来早く述べておくべき生い立ちなどが、ことが終わったあとにクドクドと説明されることで、これにはうんざりする。幼稚と見える理由だ。
セリフは冗長。例えば、「みずくさい」を「牛乳くさい」と受けて、「腐った牛乳云々」と白けるつっこみがしつこく続く。つきあいきれない。こんなのも幼稚さを感じさせる。
演出は、甘い脚本にちゃんとメリハリをつけるのではない。アイディアを詰め込んで押し切ってしまえ! とばかり、いろんなことをやる。多くの役を演じるのに同じ俳優が何役も演じるというギンギラ太陽'Sスタイルなど、手抜きしないサービス精神はいい。それなりに楽しめるが、ときにテンポが悪くなって白けたりと、その効果はいまいちのところが多い。
演技は、みんな躍動的で、楽しんで演じているのはいい。杉山英美(ギンギラ太陽'S)やギンギラ太陽'S出演組の存在感に比べて、若手の伊藤そうあや川口大樹の軽さが気になった。
述べてきたような不満があるのも、この劇団の意欲が見えればこそだ。ハードルをもう少し高く設定してもいい。この甘く見えるスタイルをとことん推し進めて独自の世界を作ってもいいし、ボリュームよりも質を重視したスタイルにブラッシュアップしていくのもいい。
この舞台は、きょうとあすで4ステージ。若干空席があった。