工夫された舞台で、表現の質は高いのだが、恣意的に過ぎると思えるストーリー展開に、うまく興味をつなげないところがあった。
劇団きららの番外公演は、ややドラマ性が薄いという舞台が多いような気がする。
右腕に動物の骨を埋め込まれた イヌゾウ の仕事はおいはぎ。その彼が崖から落ち、崖の下にある村の人に助けられて、そこに暮らすことになる。そこには、育ての親・シシヲもいた。
その村の人の理想は、無駄な肉を排した立派な”骨”になること。だが、イヌゾウ から教えられて、村人たちは”肉”のおいしさに目ざめていく。
舞台の表現はいつものように、じっくりと練り上げられていてスマートだ。
ただ、ストーリーは意図的にドラマを削ぎ落としたような運びで、軽くてやや線が細い。だから、「暴れたい!襲いたい!!」というのはセリフだけで、おどろおどろしさはあらわれない。
表現のスマートさとおどろおどろしさは、並存できないのだろうか。そうは思えない。
脚本は、徹底的には入り組まず乗り越えず、大事なところをサラリと流すという風情だ。それが池田戯曲の持ち味かもしれないが、何とも喰い足りない。
大きくぶち上げられた「動物の骨が埋め込まれた右腕」も、この舞台の象徴として何か特別の役割を担うかと思いきや、起爆剤にも推進力にもならずウヤムヤに終わってしまった。かなりがっかりした。
話は、欲望に目ざめた村人たちが、都への異常なまでのあこがれと、はだし と村の男たちの性関係など、”骨”とは違うところに流れていく。そのようなところでストーリーに翻弄されてしまう。二律背反をうまく描くのは池田戯曲の得意とするところだが、さらりとしすぎて背反のしかたが弱い。
「暴れたい!襲いたい!!」と叫ぶのと裏腹に、登場する人は結局はみんないい人で、対立も弱く人物も際立たない。せっかくの客演の大塚ムネト(シシヲ役)が、こんな人のよいおいはぎではもったいない。
この舞台は、16日から18日まで5ステージ。満席だった。