E−1グランプリのBパートの4ユニットは、それぞれにボリュームがあり、バラエティに富んでいて楽しめた。
『奇跡』(福袋(ハッピーバックズ) 作・演出:石丸愛梨)
「夢を持ちつづけよ!」というミュージカル。ファーストシーンでグッとひきつけるのはいいが、それが持続しない。それは、何ひとつとして具体的な行動がなく、青臭い抽象的なスローガンばかりが繰り返されるためである。そのような硬直した脚本を、古臭い演出でやられたのでは、せっかくの俳優も生きない。上演時間約30分。
『天才が死んだ』(どデブ 作・演出:田坂哲郎)
発想と表現のおもしろさで見せる。殺された、小さな村の天才の死体探しの話だが、そこにビートルズなど世の中の天才のありようを凝縮させる。そのための発想は奇抜と言っていいほど柔軟で、表現もとらわれず自由にやっていて楽しめる。
田坂哲郎は観客の感性と想像力を信じていて、少々なことをやっても観客はついてきてくれると思っているようだ。だから、イメージの形象化よりも、イメージを膨らませることを優先する。もともとのイメージがさらに鮮明になり、俳優の表現力がさらに高まれば、ずいぶんとおもしろくなるだろう。上演時間約30分。
『宇宙からの生還』(種子島☆宇宙センター 作・演出:前原寿代)
移住する星を探しに行った宇宙船にひとり生き残った隊員。助けてくれた宇宙人を地球に連れ帰ったが、かれらは移住先を探していた侵入者だった。
6人の隊員のうち5人までが死ぬというところに時間をかけるが、それが本筋ではないという脚本のいびつさが印象を著しく弱める。ひとりひとり死んでいくのが実は宇宙人のしわざだった―なんてのならば、ラスト近くの展開もわからなくはないが。ていねいなつくりで俳優の演技がよくても、これではひきつけられない。上演時間25分強。
『おくびょうな王子さま』(きらら 作・演出:池田美樹)
きららのよさが十分に発揮された楽しい舞台だった。無気力な王子にキューピットをさしむけて、となりの国のお姫様と「恋」をさせようとする。しかし王子は姫を無視し、町の少女と恋の話。しかしその少女の恋は姫の差し金で悲しい結末になり、それを見た王子はやっと姫に心を向けるが、姫は嫉妬心から解放されて去っていく。
シンプルな装置とみごとな衣裳など、この劇団らしい質の高さで、ていねいに表現する。少女を演じる 宗真樹子 の愛くるしい表情がいい。上演時間25分強。
Bパート4ユニットは、きのうときょうで3ステージ。
このステージでの観客の投票結果は、『奇跡』17票、『天才が死んだ』30票、『宇宙からの生還』10票、『おくびょうな王子さま』41票 だった。
若干空席があった。