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《2004.5月−8》

うまくやれば、おもしろいのだろうけれど
【会議 大問題?/卵のカラ (天地)】

作:モハン・ラケーシュ 演出:プラティブ・ニガム/高橋克昌
15日(土) 18:00〜19:25 福岡市立青年センター 3階大会議室 招待


 現代ヒンディ文学作家で、この劇団でも上演した「アシャーダ月の一日」の作者・モハン・ラケーシュの喜劇小品集2本立ての公演で、おもしろい作品を選んできている。
 しかし、演出の構想の弱さと、ビリッとしない演技で、作品のおもしろさは引き出されていない。

『会議 大問題?』(演出:プラティブ・ニガム)
 下級労働者福利協会の会議の話。メンバーのエゴ丸出しの、本題に関係ない仔細な話に、会議が乗っ取られてしまう。
 掃除夫ふたりを除く10人以上の人物は四つんばいで、地べた付近をダラダラと動き回ることで、ちぢこまった印象になってしまった。
 演出者の意図した「表現主義・象徴主義」の実現のためには、舞台の構成の大きさ・ダイナミックさ、人物のありようの形による強調・統一のとれたフォーメーションなどの演出の構想が必要なのだろうが、非常に弱い。
 また演技も、リアルをめざす姿勢から一歩も出ず、そのリアルさえも決まらず、まったく中途半端。リアルを通ってシュールに到達するのが大変で無理ならば、シュールな形から入るというアプローチ方法もあろうに、そのような発想は希薄だ。

『卵のカラ』(演出:高橋克昌)
 厳格な菜食主義者の老母のもと、卵を食べたり柔らかい本を読んだりを、コソコソとやっている長男の妻と二男夫婦と三男。卵料理の最中に老母に乗り込まれる。
 これは、リアルな会話で十分におもしろさが引きだせるが、そのリアルな会話ができない。間をおいたり相手のことばにかぶったりもなくて棒読みに近く、みごとなまでに緩急がない。
 だから、老母が現場を押さえながら、だまされたふりをしたことを、長男の口からきいてもいっこうにインパクトがない。ちゃんと書かれている山場を無視して、結末に向かって予定どおり淡々と進めるだけではどうしようもないだろう。

 この公演は、くうきプロジェクトワンコインシアター第13弾で劇団天地黒匣劇場Vol.1。きょう3ステージ。少し空席があった。
 ワンコインシアターは毎月の多彩な公演はいいが、手抜きとはいわないまでも、本公演に比べて練り上げが不十分な舞台が多いように思われる。


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