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《2004.5月−15》

演劇の体をなさず
【たんたんのリズム〜追憶編〜 (ぎゃ。)】

作・演出:中村雪絵
30日(日) 17:10〜18:20 居酒屋たんたん 4回通し1600円


 センスがいいこの劇団が、スナックを舞台にどんな発想の作品を見せてくれるかと期待したが、陳腐で手軽で薄くて、不発というよりも、作品の体をなしていない。
 10分の作品をアドリブで1時間に引き伸ばした、などと言われると、ウンザリ以外のどんな反応もできない。

 空翔ける居酒屋。そこに紛れ込んできた男の頭には、ナイフが突き刺さっている。その男は、記憶を喪失している。

 狭いスナックの、カウンターの内側とカウンター席が舞台で、観客は壁際に並んだ椅子席で観る。
 その観客をスナックの客と見立てているかどうかは、場面によって変わりかなり適当だが、観客は知り合いというのを前提としたふざけかたに見える。
 だからだろう、人物は一歩たりとも俳優自身から離れない。ママの中村雪絵は地そのままででママだし、リズの山下若菜はどんなセリフも笑い顔のままでしゃべる。その笑い顔は、スナックの従業員としての笑いの演技ではなくて、俳優本人の笑いだ。だから決して別の状況は顕れない。素のままの中途半端なアドリブばかりというのが、それに拍車をかけていた。

 この舞台は、たんたんのリズムの第1回で、毎週日曜日ごとにあと3回続編が上演される。4回全部観るつもりで通しチケットを買ったことを、後悔させないでほしいと願うばかりだ。観客は10人ほどだった。


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