子どもが中心のミュージカルで、音楽も振付もなかなかよくて美しい作品になっているが、金子みすヾの詩に頼りすぎているのと、その明るい面ばかりが強調されて単調になってしまったのが惜しい。つらく短い生涯だったからこそ強烈に求めた明るさ―子ども向けとはいえ、金子みすヾの暗いところにも少しふれてもよかった。
劇団でミュージカルを学ぶ女の子が、金子みすヾの世界に入って行き、少女時代の金子みすヾになる―それが10以上の金子みすヾの詩の、朗読やダンスナンバーで進められる。
それほど経験のない子どもたちを大きな舞台に立たせるために、高度なテクニックまで求められないシンプルな群舞を、装置や照明で引き立たせて、大きく場面作りをするという工夫がなされている。
音楽もダンスも、すんなりと心地よくやることを主眼にきちんと作られていて、演るほうも観るほうも楽しい気分になる。
女の子がみすヾの世界に入って行き、その少女時代になるというアイディアはいいのに、ストーリーがループしているという印象で、金子みすヾの世界が見えてこないのがもどかしい。
セリフがきちんとしゃべれるのは祖母役の森紀子だけで、ストーリー展開はしにくいのかもしれない。そのためかダンスなどの場面優先で、同じ詩が幾度も出てきたり同じ話を繰り返したりして効果を弱めている。もっと整理してわかりやすい構成としたほうがいい。
ふたつの世界が交叉するというところがもっと切れ味よく表現できて、金子みすヾの世界に触れて子どもたちが変わったというところを、もう少し感じたかった。
この舞台は、きょう1ステージ。1階はほぼ満員で、2階はかなり空席があった。