20代の出演者なしという、40代、30代中心のこの劇団の公演は、元気あふれる「大人の学芸会」だ。その個性的な俳優たちのハチャメチャな生きのよさも、舞台に賭ける作りのていねいさも、若い劇団には負けていない。
映画「レオン−完全版−」に想を得ているが、話は極めてわかりやすくさっぱりしている。役者の見せ場を作って、それを派手に盛り上げる方向で工夫がこらされていて楽しい。
ペック化粧品の秘密を知ったために殺されたニックから死に際に、婚約者・エリザベスと娘2人を助けてくれるように頼まれた清掃人・レモン(チェリー行武)。エリザベスと2人の少女に忍び寄る殺し屋たちから、レモンはどうやって守るのか。
トラベル石田の前説からハイテンション。
ストーリーを繋ぐそれそれのシーンはコントに近い作りだ。例えば開幕直後のシーン、レモンが女殺し屋・スジャータと出会うところなど、役者は1対1で丁々発止やりあうというのが多い。
それをやる役者たちはそれぞれに個性的で、しかも個性がまったくかぶらないから、それぞれが役をグイと広げると、舞台がグンと広がるという印象さえある。役者たちは派手な衣裳を着こなし、派手な照明や音響にも負けてはいない。
バイオレンスアクションだがいちおう勧善懲悪ものだから安心して見ておられる、と思いきや、レモンが夢想したようにはうまくいかない―ほろ苦すぎる現実。そこで起死回生のために命を張る―絶体絶命というところまで追い込まれる。そのあたりを踏まえながらも、エンターテインメントとして軽く遊び心たっぷりに進める。
この舞台は、チェリー行武卒業公演スペシャルということらしい。ほとんど出ずっぱりのチェリー行武が、この人らしいユーモラスと哀愁をないまぜにした個性をいかんなく発揮している。
これでまた2年近く公演がないということになるらしい。最低でも年1回は公演してほしいと思うし、主要メンバーが50代になっても60代になってもそのペースで続けていってほしい。
この舞台は11日から13日まで5ステージ。若干空席があった。