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《2005.2月−8》

オリジナルたっぷりはいいが、練り上げ不足
【Chocolat〜ショコラ〜 (池田商会)】

総合演出:きんじょ
13日(日) 11:10〜13:20 テアトルはこざき 1200円


 特別公演Unit Jam Vol.1 と銘うたれた劇団内ユニット合同公演だ。出演の5ユニットのうち、今回初登場のユニットが2つ。スタッフ・キャストがユニットを越えて入れ混じって、劇団としてのまとまりも見える。
 せっかくオリジナルをここまで作り上げているのだから、ここは演出をもう少し緻密に練り上げ、稽古ももっと十分にして、作品の質を上げるように希望する。

○NIPPON文化研究講義バレンタイン編 (きんじょ Made Works 作・演出:きんじょ)
 全体のイントロダクションで、先生と学生服姿の生徒がふたり。3人ともサングラス。バレンタインデイのいわれの講釈のあと、チョコレートの受け渡し方の実習で、印象のよい渡し方と受け取り方のベスト3とワースト3の12パターンを演じる。冗談ぽくって軽い。約7分。

○ラブ・ファカルティー (きんじょ Made Works 作・演出:きんじょ)
 広告代理店で、女性社員・三曽野からどっちがチョコをもらうかを競う社長・北野と新入社員・鈴木は旧友。三曽野の吹っ切れない失恋に触れ、さらにふたりが競っていることが三曽野に知られてふたりとも振られるが、実は三曽野はチョコを2個用意していた。
 細かい心の動きまで、うまく表現している。約20分。

○sunset#02 (総合芸術舎 玉屋 作・演出:三原宏史)
 工場長が恋のカーナビを発明、女性従業員と彼女に思いを寄せる男とを、そのカーナビを付けたシミュレーターに乗せる。
 工場長がしゃべるそのカーナビ、バックしろなどとおもしろいが、いっこく堂や陣内智則の二番煎じも多く混じる。女性従業員が実は社長の奥さんだったという落ち。20分強。

○Lay his finger to her lips (ノーガード 作・演出:安倍祐馬)
 妹からのバレンタインチョコをねだる兄。10年分も食べずに貯めている。しかし妹の死。妹との幻想のなかで、ふたりはキスし近親相姦スレスレ。だが、兄は10年分のチョコを食べつくすことで、かなわぬ恋を終わらせる。
 溶かしたチョコを食べるシーンはグロテスクで、さびしさをうまく出している。約20分。

○甘い脅迫者 (Hieroglyph〜ヒエログリフ〜 作・演出:北川雄哉)
 ひき逃げをした警官のところに、目撃者を名乗る男が脅迫に来て、金をせびる。エスカレートしていく要求に、男を殺す警官。それは男が、生命保険を妻子に残すために殺されるように仕組んだものだった。
 男の久保大輔が、かなり不気味で見せる。30分強。

○冬色ガール (ensamble 作:三原宏史 演出:三原宏史/ensamble)
 バス停。夫と旅行に行くために実家を発つ女を見送りに来た男。
 どうした?/あのさ、オレ・・/知ってるよ。/そうか。/ごめん。/いい、ありがとう。/それじゃね。/それじゃ。(と別れて、そしてあと、さびしい男の表情を引っぱる)と、シンプルでなかなかいいセリフだ。先行するエピソードがよくなれば、このセリフはもっと引き立つ。約15分。

 以上のように、ボリュームたっぷりの公演だった。
 この公演は、11日から13日まで全9ステージ。15人弱の観客だった。


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