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《2005.2月−9》

ひとりよがりが、過ぎる
【月夜ノ砂漠ニ咲キ誇ル醜女 (セコンドユニット)】

作:松田清志 演出:セコンドユニット
13日(日) 18:05〜19:35 NTT夢天神ホール 2500円


 砂を噛むような舞台をガマンして見続けたのが、ラストのどんでん返しで少しは救われはするが、それでも、隠しておいた手の内を最後にパッと開いて「知らなかったでしょ?」といわれているような芝居だ。
 そのどんでん返しに至るまでの舞台はムダばかりで、何ともテンポがとろくてつまらない。

 女性4人の殺し屋グループ。リーダ・セーラムは、ボスからカジノの権利を譲ってもらって独立しようとする。その交渉の窓口はボスの近親者で乱暴で嫌われ者の殺し屋・モーリス。
 セーラムの妹でモーリスの恋人・ピアニがモーリス側につき、他の3人は毒入りコーヒーで殺されてしまう。

 どんでん返しだけをねらったいびつな脚本で、そのつまらないこと。どんでん返しというのは、ひっくり返す状況を観客に信じさせてこそなのに、その粗雑な舞台に、あぁそう という感じしかない。
 グループ内のちょっとした内輪もめの描き方がものすごくヒステリックで、本気でピストルまで使う始末。条件の折り合わない外国人の依頼主を平気で撃ち殺す。何だこれは?言うこともエゴ丸出しの低俗・低能な女殺し屋たちに、正義や友情を感じろというほうが無理だろう。

 開幕の内輪もめのシーンと外国人殺害までのシーンに20分もかかる。状況説明のための、本筋にからまないこれらのシーンに、どうでもいいムダばかりを詰め込んで延々と引っぱる。5分もあれば十分の内容だから、時間稼ぎの空疎なシーンに、バカにするなと叫びたいほどに白けてしまう。
 味方となるロートルの殺し屋を3人も登場させるが、本筋に絡むのは1人だけ。どんでん返しも、女殺し屋グループ全員とロートルの殺し屋たちが意識合わせをしていたことがラストにわかるが、それを観客にも隠して知らん顔で進める毒入りコーヒーのくだりなど、よくわからないところも多い。モーリスを殺した女殺し屋たちが自分たちの金を持って逃げたところで、状況は悪くなっただけでそれが何の解決になるというのだろう。そのような支離滅裂なところが、大小取り混ぜてたくさんある。
 そのような脚本を受けての演技だから相当に粗っぽくて、情感などほとんどない。舞台美術も陳腐だった。演出のつまらなさは、共同演出ということも影響しているようだ。きちんとした演出家を立てるべきだろう。

 この舞台はきのうときょうで3ステージ。ラストステージを観た。半分以下の入りだった。
 それにしてもこの内容で当日券2500円は高い。


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