よくできた三浦としまるの脚本を、膨らませるところを膨らませながらうまくまとめた後藤香の手堅い演出で、女優たちも生き生きと演じていて、情感あふれる舞台になった。
これでワンコインというのは、コストパフォーマンス抜群だ。
上演時間15分から20分の、人物も2人あるいは3人の小品4つのオムニバスで、舞台はすべて教室。それぞれは廃校になる小学校での同窓会に集まった人の話で、全体として大きなストーリーになっている。
@小3の自分に会う―幼い自分への慈しみと幼い自分からの憧れ、その交錯。
A小4の自分を見る―幼い自分への教師の優しさを知る。
B卒業式の日に埋めるタイムカプセルに入れる将来の自分へのメッセージをめぐるいじめ―それをした女はそれからずっと悔恨の気持ちにさいなまれ続けている。じかし実は・・・。
C現在―それまでの話が統合されて、大団円。
大仰にならずに自然すぎるくらいのタイムトリップだが、却って違和感はない。それぞれの小品は、小学生のころの心ふれあうできごとが、今の自分の生き様に直結していることをしっとりと感じさせる。そして、ラストにそれらがうまく関連づけられて立体的に立ち上がり、人間関係とそこに現れた心情がクローズアップされて濃密な世界を作り出す。
吟味されたセリフで無理がない。タイムカプセルの話やピンクレディの「UFO」などの、往時と現在を繋ぐものもわざとらしくなくていい。
この舞台は、ワンコインシアターでの上演作品のなかでも最良のものだ。座"K2T3 S.S公演第一弾と銘うたれている。きょうとあすで5ステージ。超満員だった。