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《2005.3月−2》

なんか、古臭さばかりを感じる
【球界裏二死満塁 (ショーマンシップ)】

作:生田晃二 演出:仲谷一志
4日(金) 19:00〜20:45 甘棠館Show劇場 2800円


 久々に観るショーマンショップの舞台は、中途半端な気分でシラ〜ッと観ているシーンが多くて、身を乗り出すこともない。
 なのに、この舞台では発想も構成も演出も演技も、大きく立ち上げてはいけないと思い込んでいるように見える。あるいは、出来上がったもので満足しているように見える。発想も構成も演出も演技ももっともっとスケールアップしないと、上質なエンターテインメントは望めない。

 昨年春の甲子園決勝で敗戦の原因となったエラーをしたことが原因で鎮守の森高校に転校してきた二階堂。
 二階堂の加入で9人となった鎮守の森高校野球部は、春の選抜に出場する。その1回戦の対戦相手は、かって二階堂がいた延享高校だった。

 なんという手垢のついたありきたりのストーリーだろう。勝っても負けていいように引っぱっといて、ハッピーエンドではない終わり方をしても何の新味もない。素直なハッピーエンドのほうがまだ自然だ。
 ならば、そのような陳腐な中でも何か工夫をしているかというと、そうでもない。作品の構成をわざわざ小さく小さくしていて、提示した問題をすぐさまひとつひとつ壊していく。大きくためて大きなダムにして一気に堰を切るというのではなく、小さな堰を作っては壊しというのでは一向にワクワクしない。
 ハッピーエンドにしなかったためによけいなエピローグを付けなければならなくなってイビツな形となった上に、腰砕けのまま終わった。そんな脚本だ。

 演出はそのような脚本の不備を積極的に解消しようとはしない。
 ドラマとしての流れよりも、個々のシーンでの役者の見せ場を強調しようとする。くすぐりも混じるという甘ったるい演出は古臭く、大事な基本のドラマへの関心を失ってしまい、肝心と思える7回裏のシーンで居眠りをしていた。
 救いは、そんななかでも俳優たちが個性的で生き生きとしていたこと。せっかくの俳優を生かす脚本と演出のレベルアップが望まれる。

 カーテンコールでの仲谷一志のつまらないしゃべりと拍手の強要はいただけない。無料のイベントか何かと間違えているのではないか。
 この舞台は3日から6日まで7ステージ。満席だった。


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