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《2005.3月−5》

いいもの持ってるから、ねぇ
【ザ・グラマーボーイズ (万能グローブ ガラパゴスダイナモス )】

作・演出:川口大樹
10日(木) 19:40〜21:30 甘棠館Show劇場 1000円


 無理やりでも見せてやろうという意欲が、多くの欠点を引きずりながらも、ラストまで何とか観客を引っぱっていくという舞台だった。
 その欠点の影に、まだ発見されていないこの劇団の演劇の魅力が埋まっているのを感じた。それを早く掘り起こしてほしいと願う。

 元アイドルのベテラン歌手のコンサート会場の控え室が舞台。
 付き人も元アイドルで、ベテラン歌手の後釜をねらっている。プロデューサーに照明チーフとアシスタントがリハーサルを待っているが、歌手の到着は遅れ、やってきたのはホール荒らしの女。その女を雑誌記者だとみんなは信じて・・・。

 暗転なしのリアルタイムで2時間近い舞台という挑戦はいい。
 その内容も、金庫のキーや、同じ機種のケイタイや、監視カメラや、詩集や、腐った八つ橋などの小道具をうまく使って伏線をはりめぐらしながら進めていくやり方は、いろいろ詰め込んだ結果荒削りに見えるというところもあるが、興味を繋ぐ工夫はいっぱいあり、作り上げた雰囲気がなかなかいい。
 役者も悪くはないが、ときに力の入れ方を間違っていて、それも荒削りと感じる理由だ。そんな中でプロデューサー役の竹内元一が、大仰でありながら存在感ある演技でパニックをみごとに感じさせて頭抜けていた。

 欠点は、ラスト30分のための芝居になってしまっていること。早い時期に主軸となる「問題」の提示がほしかった。
 問題だらけで絞りきれないし、人物がかなり軽薄でそれそれの思い入れに同調できないため、関心が薄くなる。だから始まってからの三分の二はかなり無鉄砲な展開に見えてしまい、いっぱい仕込んだいいネタが生きてこないのが惜しい。
 せっかく作ったそれらしい雰囲気があっても、わざとらしい力の入った演技でガーガーと引っ掻き回して一々壊してしまい、緊張をぷっつりと切って舞台への興味をわざわざ削ぐ。自然に発すると見えるセリフにしか笑いがなかったことからも、わざとらしい演技が演技者の自己満足でしかないことがわかる。

 この舞台は万能グローブ ガラパゴスダイナモスの旗揚げ前の第0回公演で、きょうとあすで3ステージ。ほぼ満席だった。


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