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《2005.3月−8》

知的でセンスいい、シュール
【移動の法則 (水と油)】

作・演出:水と油
17日(木) 19:05〜20:15 NTT夢天神ホール 1750円(優待チケット)


 マイムとダンスを組み合わせた繊細で切れのいいステージで、研ぎ澄まされたハッとするようなシーンが多いが、全体的に非常にスッキリとしていて、疲れて大きな動きにしか反応しなくなっているわたしのダンス感性は、時に睡魔に負けてしまいそうになる。
 うつつと夢を行ったりきたりという、要するに居眠りしながらの鑑賞は、それはそれでぜいたくには違いないが。

 大きな4枚の白い壁はキャスター付きで、それをパフォーマー自身が動かして場面を作る。あとの装置は、白く塗られたビリヤード台。
 はじめに3方の壁でビリヤードの遊戯場のマイム。途中4枚ずらして並べてダンス。そして最後が美術館のマイムという大きな構成。
 マイムはストーリー性があり、コントの要素もあり、そのディテールをダンスの動きで強調するというステージだ。

 男性3人、女性1人のグループだが、性差をほとんど感じさせない。男性3人のキャラと年齢の違いは幾分役のうえに反映されるが、そこは役そのものが抽象化されているから、ストレートプレイのような強い個性は現れない。
 はじめのビリヤード場では、ボールを3人が手でつかんで、その動きを空間に立体的に表現して遊ぶなど、おもしろいと思ったことを本気でやってみてうまく見せる形にまでもっていっている。そのような遊び心に溢れていて、ムダがない。
 ひとつのことに深刻にこだわるということはなく、マイムからダンスにサッと切り替えて収束させていく手際はいい。

 マリオネットのような無機的で軽いマイムの動きだが、ダンスの動きもマイムのように切れがいい。
 そのような肉体感覚のなさで、全体的には叙情を排して乾いた印象の舞台だ。それでも美術館のシーンでは、「黄昏」を感じさせる照明でさりげなく強い叙情性を感じさせる。そのようなことも含めて非常に理知的なパフォーマンスだ。

 この舞台はきょうとあすで2ステージ。わずかに空席があった。


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