あまりダンスを観ていないから、普通の「ダンス言語」とはどんなものかよくわからない。「ズバ抜けてヘンテコな作風」といわれるマリー・シュイナールのダンスを観ても、「ヘンテコ」というよりも「こんなのもアリ」だが、びっくりするのはその内容の豊穣さだ。
今回の演目は、「ショパンによる二十四の前奏曲」と「コラール〜讃歌〜」という50分前後の2本。それぞれにしつこく掘り起こした官能的なボリュームたっぷりのダンスが楽しめた。
「ショパンによる二十四の前奏曲」は、ショパンの前奏曲のピアノ生演奏に合わせた10人のダンサーによるダンス。女性6人、男性4人のダンサーの衣裳は水着風で、女性のそれはかなりシースルー。
そのダンスは、男女のカラミを中心とするペアでのセクシーなダンスが多く、それを群舞が盛り上げているという印象。かなり無骨でエネルギッシュだ。
マリー・シュイナールのダンスがヘンテコだと言われるのは、普通の意味での形のよさを追求していないためだろう。むしろカッコ悪さを強調したようなところがある。股をO脚に開いて腰を落としたみっともないかっこうをしたり、あぐらをかいて足をバタバタしている女性を男性が持ち上げたり、一見悪ふざけとも見えるが、それがダンスとして成立しているのは、ダンサーの身体能力の高さのためだろう。表現の幅は広い。
「コラール〜讃歌〜」の内容も振付も「ショパンによる二十四の前奏曲」によく似ているが、題名からして挑発的で、セクシャリティでは「コラール〜讃歌〜」が若干上か。同じくダンサー10人による。
ダンサー同士が喘ぎ声に合わせて挑発しあい、互いの鼓動を確かめ合うように強く長々とからむ。なまめかしい。そして、パートナーを高々と激しくさし上げる動きに性の歓びがあふれている。
ヒザを紐で縛ったり、腕を紐で縛ったりしてのダンスがあるが、それが不自然に見えるどころか却って魅力的に見えるのは、身体はもともと不自由なものだと意識したうえで、身体表現の美の幅を大きく考えているからだろう。
そのようなダンスなのに、思い切り表出していて決して内にはこもらず、見終わったあとはスッキリする。
3月から6月にかけて来日する世界的なダンスカンパニー公演のこれは第一弾で、18日から21日まで4ステージ。二階席およびロビー席には空席があった。