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《2005.3月−9》

美醜混淆の美、か
【ショパンによる二十四の前奏曲/コラール〜讃歌〜 (カンパニー・マリー・シュイナール:カナダ)】

振付:マリー・シュイナール
20日(日) 14:05〜16:05 シアター・コクーン(東京) 5000円


 あまりダンスを観ていないから、普通の「ダンス言語」とはどんなものかよくわからない。「ズバ抜けてヘンテコな作風」といわれるマリー・シュイナールのダンスを観ても、「ヘンテコ」というよりも「こんなのもアリ」だが、びっくりするのはその内容の豊穣さだ。
 今回の演目は、「ショパンによる二十四の前奏曲」と「コラール〜讃歌〜」という50分前後の2本。それぞれにしつこく掘り起こした官能的なボリュームたっぷりのダンスが楽しめた。

 「ショパンによる二十四の前奏曲」は、ショパンの前奏曲のピアノ生演奏に合わせた10人のダンサーによるダンス。女性6人、男性4人のダンサーの衣裳は水着風で、女性のそれはかなりシースルー。
 そのダンスは、男女のカラミを中心とするペアでのセクシーなダンスが多く、それを群舞が盛り上げているという印象。かなり無骨でエネルギッシュだ。
 マリー・シュイナールのダンスがヘンテコだと言われるのは、普通の意味での形のよさを追求していないためだろう。むしろカッコ悪さを強調したようなところがある。股をO脚に開いて腰を落としたみっともないかっこうをしたり、あぐらをかいて足をバタバタしている女性を男性が持ち上げたり、一見悪ふざけとも見えるが、それがダンスとして成立しているのは、ダンサーの身体能力の高さのためだろう。表現の幅は広い。

 「コラール〜讃歌〜」の内容も振付も「ショパンによる二十四の前奏曲」によく似ているが、題名からして挑発的で、セクシャリティでは「コラール〜讃歌〜」が若干上か。同じくダンサー10人による。
 ダンサー同士が喘ぎ声に合わせて挑発しあい、互いの鼓動を確かめ合うように強く長々とからむ。なまめかしい。そして、パートナーを高々と激しくさし上げる動きに性の歓びがあふれている。
 ヒザを紐で縛ったり、腕を紐で縛ったりしてのダンスがあるが、それが不自然に見えるどころか却って魅力的に見えるのは、身体はもともと不自由なものだと意識したうえで、身体表現の美の幅を大きく考えているからだろう。

 そのようなダンスなのに、思い切り表出していて決して内にはこもらず、見終わったあとはスッキリする。
 3月から6月にかけて来日する世界的なダンスカンパニー公演のこれは第一弾で、18日から21日まで4ステージ。二階席およびロビー席には空席があった。


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