耽美的な宣伝美術と違って、現代劇としていかにもオーソドックスと見える舞台だ。
大掛かりな舞台装置を使うわけではないからセリフ劇となってしまいのはしかたないとしても、シンプルすぎてあっけない。セリフなどもっと装飾的でもよかった。
女怪盗・黒蜥蜴と、名探偵・明智小五郎との対決。
黒蜥蜴にまんまと、宝石商・岩瀬家の娘・早苗を誘拐されてしまった明智。早苗を取り戻そうとした明智は、黒蜥蜴の船から海に放り込まれてしまうのだが・・・。
蝋人形たちを演じるダンサー役を除けば、メインのキャストは5人。劇のかなりの部分が、黒蜥蜴と明智の会話で進められる。丁々発止の会話劇ではあるが、そこだけに終わっていて、さらりとしすぎていて欲求不満が残る。
前回の福岡公演の舞台の思い切った展開と過剰気味の装飾性が、今回も観られるかと期待したが、不発だった。
パンフレットに書かれたあらすじを見ると、4幕くらいに分かれていて、それぞれの幕はいくつかの場に分かれるという大きな構成に見える。しかし、この舞台は一幕ものに見えてしまった。
「場」の転換は、ちょっと静止してわずかに照明を変えただけでうまくわからせていてまあよかったが、「幕」の転換も同じように軽くて、緩急のない舞台になってしまった。ことばでしゃべられてしまい舞台の上で起こることが非常に少ないのは、舞台条件の制約からしてやむをえないところはあるが、もう少し工夫してもいい。また、黒蜥蜴と明智のやりとりのセリフを、もっとふたりの心に踏み込んで魅力的にするべきだった。
そのような結果、本編に入らないうちに終わってしまったという印象さえあった。
この舞台は、早稲田大学公認の「劇団たま。」と「福岡たま団」との合同公演で、 ステージ。
地震の影響で会場がアトリエ戯座からシアターポケットに変更になったこともあってか超満員だった。シアターポケットを立体的に使っていたのはおもしろかった。ダンサー役に、伸びやかな肢体の美人女優が多かった。