いちど観たいと思っていたシルク・ドゥ・ソレイユのステージを初めて観た。
サーカスの技のエンターテインメント性をさらにデコレーティブに強調して際立たせたステージに、夢見ごこちになった。
二部構成で、途中の30分の休憩も含めて2時間半の上演時間。
メインとなる出し物の数はそれほど多くはない。そこに動物は出らず、オートバイのショーもなくて、もっぱら人間の技を見せる。その技をまわりから飾り立てて、強く観客に届くような工夫をこらして、ステージを磨き上げている。
第一部は、オープニングのあと次のような演目が繰りひろげられる。
「ニュー・シンクロ・トラピス」(男女デュオの空中ブランコ)
男女デュオとすることで楽しさが増した。揺れるブランコの上での激しい動きや様々な姿勢を、ふたつのブランコがシンクロさせながらやる。
「スーパー・パワー・トラック」(集団トランポリン)
金糸のボディスーツに身を包んだ10人もの若者が、X字に交差した長いトランポリンボードを使って縦横無尽に跳びまくる。動くスピードと、空中で何回転もするその高さに驚く。
「スラック・ワイヤー」(綱わたり)
ゆるく張ったワイヤーを使った綱渡りで、一輪者の上での倒立までやってのける。
「ファイヤー・デュオ」(ファイヤー・ナイフ)
激しく廻される大きなファイヤー・ナイフがダイナミックで、ひとりが2本ずつ計4本のファイヤー・ナイフが乱れ廻る様は壮観。床のアルコールが燃え上がる演出も効果的だ。
「マニピュレーション」(リボン&テープ)
新体操のリボンとテープを中心に、バレエの要素なども入れたステージ。レオタード姿の少女の、体の線の美しさにうっとりさせられる。
休憩のあとの第二部も、同じように進められる。
「ニュー・ロシアン・バー」(バーを使うトランポリン)
ふたりが肩に担いだ幅20センチくらいのバーの弾力で大きく跳び上がるパフォーマンスを、3組がシンクロしてやる。いちどもバランスをくずさないのは、みごとというしかない。
「ニュー・コントーション」(柔軟フォーメーション)
モンゴルの10歳と11歳の少女が超柔軟な身体を見せるパフォーマンスで、易々とやっているように見えるその自在さもさることながら、どのような形も美しく見せる工夫がされている。
「スーパー・エアリアル・ハイバー」(集団空中ブランコ)
地上12メートルに組まれたハイバーから、ふたりが乗ったブランコめがけて跳び、ブランコから逆さにぶら下がる人とがっちりと手を握る。それを次から次へと繰り返すのはなかなか迫力だ。
全体的には、魔法の国の秘密のパーティをイメージしたという雰囲気だ。
絵本の悪魔のような奇矯な姿の謎めいた案内人がいる。メインの演目の間をピエロによるコミカルなパフォーマンスでつなぐが、ピエロ以外にもニンフなどのこれも謎めいたいくつかのキャラがいて、演技中も常に誰かが見守っているというスタイル。演者は舞台にひとりになることはなく、舞台が寒々しいとか寂しいということのないようにしている。BGMとしてホワイトシンガー・ブラックシンガーによる歌が演技中いつも流れている。
そのように、観客を惹きつけるのはもちろん、一瞬たりとも飽きさせることのない工夫がこらされている。
このステージは、福岡では2月9日から4月3日まで。福岡公演のラストステージを観た。ほぼ満席だった。