福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ


《2005.4月−4》

西鉄ホールに、魔物?
【E-1グランプリ番外編 二傑ジョイント公演  (アートマネージメントセンター福岡)】


9日(土) 19:10〜21:20 西鉄ホール 招待


 E-1グランプリ番外編 二傑ジョイント公演は、マニアック先生シアター「ロジウラ*ラジオ」と非・売れ線系ビーナス×万能グローブガラパゴスダイナモス「況わんや、百年振りの粗捜し」の二本立て。
 1時間ものを西鉄ホールでやるにはどれくらいパワーが要るかということをわからせてくれるという舞台だった。

「ロジウラ*ラジオ」(マニアック先生シアター 作・演出:山口ミチロ)
 山口ミチロの作品はだんだんおもしろくはなってきたが、西鉄ホールの舞台で1時間ものをとなると、まだまだ課題も多いことがわかる舞台だった。上演時間55分。
 息子を死なせてしまったために家出して「ドア」を探して放浪する男。占い師が示すドアから、息子の名前を持った3人のおとなが次々に現れる。
 別の時間を生きていた息子たちと会うという発想はまぁいいし、役者のがんばりもあるのに、いかにも骨格だけという感じで、時間的・空間的に重層する背後までの広がりを感じさせず、舞台の密度が薄くて単調だ。3人の息子(うち一人は性転換している)のセリフから、あり得たかもしれない世界が広がればいいのだが、そこまでの構成の大きさや惹きつけるアイディアや魅力的な言葉が少なく、存在感が薄い。役者はソロでの見せ場ばかりで絡まず、一向に関係が広がらず、展開がストップしたままでスタティックな舞台になってしまっているのが不満だった。工夫の余地が多い。

「況わんや、百年振りの粗捜し」(非・売れ線系ビーナス×万能グローブガラパゴスダイナモス 作・演出:田坂哲郎)
 田坂哲郎の初期の代表作の再演。発想のおもしろさがいかんなく発揮された作品で楽しめた。それほど長い作品ではないが構想は大きく、その構想を満たすような演出の工夫もあって見応えのある舞台となった。上演時間1時間5分。
 捨て子のテンノが、計らずの鍵屋のシナリオ、この世のハジメのプロデュースでショウワテンノにまでのしあがり、戦争から敗戦。しかし人々はヘイセイテンノを望むという流れのなかで、ショウワテンノは消され、この世のハジメも追われ、命を狙われる。
 主要な2人の人物の現在と未来を同時に登場させることで、ひとつの舞台上で時間を重層させるという作品の構成はみごとだ。20人を超える出演者だが、メインの役は少人数で、それでいて人物は多彩で時に豹変しそのからみも多様だ。
 舞台背面を覆う白い幕に大きな唇と見える模様が描かれ、戦争の時代になると幕の左右を入れ替えると、それが旭日旗に早替りという演出など楽しい。多くのアイディアが詰め込まれている。
 ただ、今回はそれらのアイディアを絞り出していたように感じたのは、ホールの大きさが影響しているのだろうか。初演のときはそれがあふれ出たように感じたのだが。
 演技の軽さについては、それが持ち味でもあるしあまり言うまい。もっと大きな力強い演技ができるようになれば、軽さとの落差の大きさが魅力として顕われ、さらに魅力的になるだろう。

 この公演はきょう1ステージ。若干空席があった。


福岡演劇の今トップへ 月インデックスへ 前ページへ 次ページへ