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《2005.4月−6》

G2さんの話が、おもしろい
【演劇関係者 交流会 (プラネット)】

主催:プラネット
16日(土) 18:40〜22:00 ぽんプラザホール 1000円


 「福岡演劇人 交流会」という催しがあり、そのなかのG2さんの話がとてもおもしろかったので、ここに書いておくことにしたい。

 「福岡演劇人 交流会」は、この秋にミュージカルを上演予定の(株)プラネットの主催で、福岡の演劇人の横のつながりを目的として開催された。
 10分ほど遅れたために主催者((株)プラネットのエンターテインメント事業室の永野室長)あいさつが始まっていた。会社とそのエンターテインメント事業室、およびこの秋に上演予定のミュージカルの説明があった。約15分。

 そのあと、ギンギラ太陽'sの大塚ムネトさんによる講演。300人まで落ち込んだ観客動員からどのようにして現在に至ったかについて、「目標を立てて、それに向けての戦略を持て!」という。質疑応答も含めて30分強。

 さらに、参加の11劇団と1団体のプレゼンが途中休憩も含めて約90分。若手劇団が多い。そして交流の時間が約10分。

 演出家G2さんと(株)プラネットの永野室長とのトークおよび質疑応答が、21時15分から22時までの約45分。これが実におもしろかった。以下、なるべく詳細に話を再現してみたい。(文責は薙野)

○いつも絶妙のキャスティングだが、あて書きか?
 あて書き、あて書きじゃないの両方で、キャスティングの後あて書くこともある。18日からの西鉄ムーブ69 G2produce#9 「Candy's(キャンディーズ)」 の場合、1年前に第一稿を書き上げたが、その時点ではアニメ状態で、実際の舞台づくりは実写版を作るという感じで、違和感をなくすためのキャスト探しを十分に行う。そのようにキャストが決まってから再度あて書きをする。

○演出のとき考えることは?
 何も考えない。考えると曲がった方向に行く。第一印象が大事で、わからないところに陥らないようにする。

○脚本はどこから書くか?
 何を書くかが大切で、話を考えるのに2ヶ月、書くのは10日くらいで、頭から書く。ラストを決めずに書くというのはだめで、また、話を考える時間が少ないのに書き始めたら、書くのに時間がかかってしまう。
 劇作家とは、同じ傾向のある人のほうがやりやすい。どんなものができるかわからない劇作家とは合わない。脚本づくりから一緒にやっていきたいから。「ダブリンの鐘つきカビ人間」の場合、決定稿をもとに作り直して書いてもらった。
 劇作家としての後藤ひろひとさんとはやりやすい。劇作家のセリフは変えることはしないが、第一稿に演出家として多くの注文をつける。後藤ひろひとさんは、演出家G2の注文を全部とらえてわかったうえで書き直してくる。
 かって、脚本を切って並べ替えて演ったということがある。

○芸術とエンターテインメント
 芸術は、誰にもいいと言われなくてもいいもの。しかしそれは、ぼくがやりたいものとは違う。
 エンターテインメントは、そういう側面は捨てないで、多くの人に観てもらいたいものといえる。だから作るときも、プラス指向の人が複数で話したほうがいい。作者が提出するものを受け入れられない人にならないのは、お客の感じでエンターテインメントを作るからできることだ。
 「これをやると客に受ける」というところには行きたくない。少人数で何がおもしろいか話して、お互いの違う部分をぶつけ合うとおもしろいが、二度とやりたくないといままでに二人から言われた。

○「しかたがない穴」の6角形の部屋は美術のアイディアか?
 いつもは、劇作家が書いてくるものをどうやって壊してやろうかというのが醍醐味だが、「しかたがない穴」は違った。相似形の部屋があってどの部屋にいるかわからないというミステリーだが、劇作家・倉持裕には相似形の部屋というアイディアでやられた。そうでないと作れない舞台だから。

○キャスティング
 キャスティングで、この人が出るからお客がくるだろうと思うとダメになる。いいなあと思った役者だから見たいと思ってキャスティングする。
 「Candy's(キャンディーズ)」の場合、久保酎吉さんという俳優をこまつ座の「紙屋町さくらホテル」で見て「親方がここにいた!」と思った。はまっているので注目してほしい。「紙屋町さくらホテル」と同じような役ではなくても、そこは久保酎吉さんだと思った。具体的な役づくりについては、稽古中にどうするか考える。

○制作
 G2produce の制作がやめたら、演出をやめようとさえ思っている。制作は重要で、プロデューサー的なことは実現しなかったら意味がないと思っている。「Candy's(キャンディーズ)」では、石鹸づくりの話のなかに、演劇の制作と作・演出のような関係も込めて書いている。そのせめぎあいを舞台で見てほしい。

○将来は?
 帝劇でやりたい。「ミスサイゴン」を帝劇で観たとき、「こんなおもしろいものを何で日本人がつくれないのか!」と悔し涙で泣いた。帝劇の満員の拍手を俺が作り出したい。これはもう怨みです。

○笑いを作るのに、慣れてしまう―マンネリ化をどう回避しているか?
 第一印象をなるべくキープするようにする。同じことを繰り返すとき、結局なぞってはダメ。そのためには元の部分を同じにしないといけない。
 なぜおかしいかを説明してはいけないが、自分がわかっていることだと思う。おかしさの根幹がわかっていれば飽きることはない。瞬発力で作ったものはなぜおもしろいかわからないことが多い。そのシーンでは何があるかがないとダメで、それがあれば何回やっても飽きない。

 参加者は当初40名弱だったが、ラスト近くには火曜劇場の打ち上げメンバーの参加もあって60人を超えていた。
 G2さんの話を聴かれて、もううれしかった。一流の演出家はすごい。新感線も帝劇進出したことだし、G2さんはいま帝劇にいちばん近い演出家だと思う。


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