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《2005.4月−7》

北九州と落差ありを、実感
【THEATRE SONES 5 (cafe SONES)】

構成:cafe SONES
17日(日) 15:05〜16:55 秀巧社レセプションギャラリー  2300円(1ドリンク付き)


 ことしの THEATRE SONES は北九州からのこされ劇場≡の参加で、福岡の劇団の舞台との質の違い―福岡の劇団の舞台の雑駁さを感じさせられた。

「五副星」(グレコローマンスタイル 作・演出:岡本啓充とグレコローマンスタイル)
 「つまらない」を通り越して、観たくもない「ゲス」な舞台だ。いい舞台を作れるこの劇団がなぜかこんな舞台を作り、その上演になぜかストップもかからないという、この劇団の基本姿勢と審美眼を疑う。こんな内容で上演時間40分は長すぎる。
 つぶれる喫茶店の最終日。店長は外出で、ウエイトレスに常連客が三人。そこに飛び込んできた男を皆はコーヒー店ランクづけサイトの調査員と思い込んで、喫茶店を継続するために五つ星を取ろうと画策する。
 魅力のない人物のどうしようもない話をつなげてもつまらないだけだが、この舞台にはさらに、気分が悪くなる「ゲス」が仕込まれている。その「ゲス」とは、浄水用の木炭入れに「気絶するほどの臭いがついた汚れた靴下」を使うこと。こういうのはナンセンスとはいわない。ひどすぎるおぞましさだ。その前の「催眠術用の5円玉を吊るす糸の代わりに靴下を使う」とか「汚れた靴下の臭いで気絶させる」というのも何考えているかわからずひどいが、「汚れた靴下で浄水」という吐き気をもよおすほどの気分の悪さはガマンの限界を超えている。
 気分悪くなるために芝居観に来てるんじゃないぞ!入場料を返してくれ〜ぇ!

「曖昧のかけらたち」(のこされ劇場≡ 作:義経友紀 演出:市原幹也)
 二匹のネコの心の動きをていねいにきっちりと表現していて、惹きこまれる舞台だ。
 二匹の野良ネコ。一匹はノラになってしばらくたち、もう一匹はいなくなった飼い主を待っている野良ネコ予備軍。この感覚の差に二匹は互いに違和感を感じるが、徐々に互いにわかり合い認め合っていく。
 二匹のネコのけっこう繊細なやりとりがなかなか楽しい。二匹の会話に加え、愛猫が死んでさびしい女をからませて、二匹の置かれた状況と個性がくっきりと見えてくる。一匹の飼い主がいなくなったときのことがかなりさりげない調子で話され、自殺をはかったということがわかるが、生死まで明確には示さないで余韻を残す。
 ネコは、黒子の衣装の女優がネコのぬいぐるみを首からつるし顔は人のままで、前足を手で動かす。しゃべりも動きもよくてすっきりとした印象だが、よく練り上げられていてそれぞれのネコの微妙な思いまで伝わり、そういう意味での情報量は多い。そうだからこそ緊張感もあるのだろう。ただ、一匹が自分の名前を思い出したところまではいいのだが、ラストの「手のひらを太陽に」という手垢のついたくくりには白け、やや興ざめしてしまった。
 この舞台はのこされ劇場≡のライブ版の作品のひとつで、上演時間は約20分だった。

「変身〜カフカじゃないほう〜」(ギャングママMAX 作・演出:光安和幸)
 テンポがあり、ヒーロー(ヒロイン?)の変身が楽しい舞台だが、雑駁さが若干気になった。
 悪と戦い地球を守る正義の味方の姉妹。返信メールがないと変身できない姉・1号は、恋人からの返信メールをイライラしながら待ち、妹・2号はうまく作動しない旧式の変身ベルトに四苦八苦。それでも、メールが届いて1号は派手なピンクのコスチュームのかわいい女闘士に。駆けつけた恋人の前で、ウェイターに化けていた敵を倒す。
 まあ、楽しければいいのかもしれないが、勢いだけでもっていったようなところに不満が残る。ものすごいデコレーションのジャンボなドリンクがそこだけに終わってしまったり、ウェイターに化けていた敵は1号の変身まで悠長に待っていたりと、例のごとくそこだけおもしろければいいという作りだから、恋人役の光安和幸の抑えた演技に却って心情が伝わり新鮮に見えた。上演時間約20分。

 練り上げられているものがおもしろいとは限らないが、練り上げられていない舞台はまずおもしろくない。
 福岡の劇団には、企画力不足・作劇力不足・演出力不足・稽古不足を感じた。雑駁という所以だ。例えば、福岡の2劇団ともカフェが舞台だが、主催の cafe SONES からの連想にとらわれているとしか思えず、そこに発想力不足を見てしまう。

 この舞台はきょう1ステージ。ほぼ満席だった。


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