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《2005.5月−6》

ライブ感も、映像のおもしろさも
【ゲキ×シネ 髑髏城の七人〜アオドクロ (松竹)】

作:中島かずき 演出:いのうえひでのり
18日(水) 19:00〜22:35 AMCキャナルシティ13 2000円


 舞台を高精細ディジタル撮影したものを編集して、映画館の大スクリーンで見るというゲキ×シネ、その福岡では初めての上映である「髑髏城の七人〜アオドクロ」は、予想をはるかに超えるおもしろさだった。
 収録された舞台のおもしろさはもちろんだが、それをうまく映像で強調していて、約3時間半という長い上映時間なのに一瞬たりとも飽かせることはなかった。

 本能寺の変から8年後の天正18年。信長の影武者だったふたりの男の壮絶な戦いを描く。
 ひとりは天下を取るべく関東に髑髏城を構え、もうひとりはその横暴に逆らって、人々を守ろうとする。

 舞台について見ていこう。
 まず、ものすごいボリュームに圧倒される。大きく広げた想像力が生み出す派手なストーリー展開だが、歴史的事件の後日談として歴史上の人物も登場し、実際の歴史と整合はしていてどっかに吹っ飛んでいくという感じはない。
 たくさんあるアクションシーンが、実によくできていて迫力だ。スターウォーズばりのSFチックなド派手な衣裳もそのアクションシーンを盛り上げる。バックに流れる歌も含め音響の切れ味はいい。ダイナミックにたくさんのライトが連動する照明の多彩さも特筆に価する。個性的な俳優たちは、思い切りやっている。
 ド派手だからといって決して大味にはならないのは、そのようにたくさんのアイディアが詰め込まれているからで、大きな構想から小さなギャグまで、そのアイディアの総量は普通の芝居の2、3倍はありそうな気がする。

 映像化について見ていこう。
 舞台のおもしろさを増幅させるような映像化の工夫が凝らされていた。天井からの撮影などはなく基本的には観客目線だが、画面はいちばんいいカットを求めて実にダイナミックに切り替わる。顔の大写しのシーンのように、舞台の観客が見られないものをうまく組み合わせて、映像としてのおもしろさを引き出しており、舞台のライブ感もあって生き生きとした映像だ。
 普通の劇場中継と違うのは、画像はもちろんだが、音が圧倒的にいいこと。クリアでな過剰なくらいのボリュームの音声だが、それは演劇の聞き取りにくさを避けるために意識的にやられているようだ。音声については、拍手の音など入りはするが、スタジオで録音されたものも使われているようだ。

 私が演劇好きだからおもしろいということもあろうが、そのことを抜きにしても、テレビでの劇場中継などとは違い、映像が芸術作品としても完成度の高いものになっていて楽しめる。新しい表現形式として定着するのではないかという気がする。演劇に比べて料金が安いのも魅力だ。

 この上映は、福岡では15日から20日まで一日1回。きょうは、定員144人の映画館に7割ほどの入りだった。


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