細かいことをいえばいろいろあるが、何としても見応えのある舞台を作り上げようとするしつこさが、この舞台を魅力的にしている。
一ヶ月公演という思い切ったことをやってくれたのもいい。
「ロミオとジュリエット」を演出中の夢之花咲太郎。いわくありそうな西洋ヨロイの剣で真っ二つ、善の人と悪の人のふたりに分裂してしまう。
そのふたりが1時間ごとに交替してのケイコ―果たして上演までこぎつけられるのか?
その1時間ごとのケイコ交替というのがなかなかおもしろい。シーンごとに演出が大きく変わるのもおもしろいが、同じシーンでも善と悪が強調されてメリハリがついて、グッと見応えが出てくる。やや陳腐かと思える発想を、知りつくした演劇の世界で膨らませている。ただ、もう一段その発想が飛躍してもいい。
そのような脚本のおもしろさを、仲谷一志は歯切れよい演じ分けている。替え玉を使い、早替りで、善だけあるいは悪だけという極端なふたつの個性を小気味よく演じ分ける。2時間ほとんど出ずっぱりの熱演だ。
そのような仲谷に対して、若手俳優の非力を感じさせられた。中堅どころも層が薄いために、舞台が雑駁という印象を免れないが、脚本に助けられているところもある。かなりわざとらしい人物設定だからこそいかにもと見せる演技力が要るのだが、小さなクスグリなどばかりに熱心で、役づくりはまだまだ不十分だ。アンサンブルも不十分だ。
「ロミオとジュリエット」に寄りかかりすぎとも見えるが、そこから極端な演出ができるシーンを選んできているのはいい。ただラストの演出については、あまりに安易なハッピーエンドで白ける。この作品のテーマにこじつけてうまくまとめようとして、安易に流れてしまった。シェイクスピアをぶっ壊すといっても、とてもとても歯が立たないのがわかる。
この舞台は、劇団ショーマンシップの創立10周年記念公演で、4日から30日まで25ステージというロングランだ。挑戦に快哉を叫びたい。
客席はいつもより少なくて40席くらい。若干空席があった。