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《2005.8月−8》

何、考えてるんでしょうね
【レオンスとレーナ (うずめ劇場)】

作:ゲオルク・ビュヒナー 演出:藤沢友、ペーター・ゲスナー
26日(金) 19:40〜21:25 1901東田第一高炉跡 特設ステージ 3000円


 喜劇なのにまともな笑いが一つもない、どうしようもなくつまらない舞台だった。
 そのあまりの雑駁さに、「これが『いまわのきわ』のうずめ劇場の舞台か!」と、わが目を疑ってしまった。

 大人になることを拒否するポポー王国の王子レオンスと、その結婚相手で、夢見がちで我が強いピピー王国の王女レーナ。ふたりはあいまみえる前に、政略結婚から逃げ出して、それぞれに放浪する。
 その途上で、相手が政略結婚の相手とは知らずにふたりは出会って恋をし、最後にはめでたく結婚する。

 ありすぎる欠点に、どこから文句を書こうかと迷ってしまうほどに、欠点だらけの舞台だ。
 何も考えていないというよりも、わざわざおもしろくないようにやっているんじゃない?という感じだ。
 思惑はわからんでもない。溶鉱炉の一角で、「レオンスとレーナ」の物語がはじけて、観客の大笑いがこだまする、そんな様を思い描いたであろうことは想像できる。だが、それを実現するには、それなりのスキルがなくては、意気ごみだけあってもどうにもならない。

 脚本は、下手に翻案されたことで平板になってしまい、ダラダラとしていてそれぞれの場面が際立たない。セリフの言葉に緊張も詩情も弱く、原作の魅力を消してしまったとしか思えない。
 演出は、陳腐そのもので、弱いことばで薄めたセリフを、薄いままにダラダラと、場面のメリハリもなしに進める。装置をもっと工夫してもいいし、おざなりな照明や音響をちゃんとしたがいい。
 演出がそんなふうだから、演技も押して知るべしだ。にもかかわらず、余裕あるよといわんばかりの虚勢にいらつく。客いじりなどやってる場合か!
 からくり人形の動き? ただ堅苦しいだけじゃん。バラバラだし、あせってるし。
 軽いしゃべり? ただのボソボソじゃん。ふつうのしゃべりがちゃんとできてからやれよ。
 歌・・? 下手な上に練習不足。聴かせる気があるの?
 おいおい、こんな状態なのに余裕かましている場合じゃないでしょ。思惑を実現するには、足元を固めるのが先でしょ。

 それにしても、ダラダラとしたストーリーはあるが、ドラマをほとんど感じない。原作にドラマがないはずはないから、この舞台がわざわざドラマを殺している。
 そのひとつが、いかにも軽薄な人物。やたらガァガァがなるだけで、個性も存在感もない。ここの人物はそういうところを超越している? そう、それならそれで、納得させる表現があるだろ!
 そんな人物で、思いが希薄だから、対立も生まれない。だから何かが乗り越えられることはあっても、その印象もきわめて希薄だ。エンディングに向かって、自分らにはわかりきったストーリーを、スケジュール的に追いかけるだけ。
 演出も演技も、想像力がみごとに欠如しているし、そのことに気づこうともしていないのは、前作「ねずみ狩り」と同じだ。

 この舞台は、25日から28日まで4ステージ。100席強の会場は、超満員だった。
 このあと9月に宮崎公演が予定されてり、また、「ねずみ狩り」と2本立てで全国公演が予定されている。


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