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《2010.6月−2》

テンポいいのは、いいんだけど
【家族耐久・久保家 (ホールブラザーズ)】

作・演出:幸田真洋
6日(日) 18:40〜19:35 ぽんプラザホール 招待


 短編とはいえツッコミが弱く、軽快にテンポだけで見せるという舞台だ。
 この劇団が持っていたエグさがそこはかとなく漂うが、そこを深めず中途半端にサラリと逃げていては、ほんとにどうしようもない。

 ネットでの「擬似家族」作りの呼びかけに応じて集まった「久保」という姓の男3人と女3人。
 しかし、長女(役)の親友が現れて、なぜか母(役)となって、その奔放さに家族間に波風が立ってくる。

 それぞれの人物のわけありの部分がポンポンとはがれていくテンポのよさはいい。リアリティを削ぐような大げさな演技が抑えられているのは好ましい。
 ただ、父(役)と母(役)の性的関係がばれて他の男が妬くというような、本来ギドギドとしている重いところまでを、いかにも軽くさりげなく流している。現実の家族生活のパロディとして見ればそれでいいという考えもあるかもしれない。
 それでも、このふたりの性的関係がことばで語られるだけで伏線も何の表現もないのは不自然で、何かに遠慮しているようないい子ぶりは物足りない。セックスシーンまでやってもいいし、最低でも男からの誘惑シーンぐらいはないと、インパクトのなさに欲求不満が募るばかりだ。

 「擬似家族」として集まったそれぞれの人物の、その個性と思いの表現は弱い。
 はじめは「擬似家族」の「擬似」的なところが、いかにも落ち着かない雰囲気でおもしろかったが、おもしろかったのもそこまで。
 束縛が嫌いだったり経済的な問題があったりと、それでもそれぞれの人の集まった理由についてうまく表現することで、人物の個性もちゃんと描けていれば、そこから見えてくるドラマもある。
 こんなドラマツルグが言うような感想を書かなければならないということは、この脚本がまだ習作段階だということだ。もっと何回も書き直して練り上げていくべきだ。

 時間が経過しているのに同じ衣装とかも、ちょっと気になった。

 「耐久家族」は全6ステージで、この「久保家」編は3ステージ。少し空席があった。


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